第23話
チアside
初めはお互い気まずさからチビちゃんが寝ていたり、1人で遊んでたりすると何をどうすれば良いのか分からず、お互いがお互いの事に気を取られチラッと目が合うと慌ててそらす。
そんな日々が続いた。
そして、私たちはチビちゃんの事があるからと言って数年ぶりにスマホでのやり取りを交わす。
不思議とチビちゃんは父ちゃんと呼ぶジュンセよりも私に甘えて懐き、日増しにチビちゃんへの特別な思いが大きくなっていき離したくないと私の心が叫ぶようになった。
しかし、それは不可能で私はジュンセとのこの関係を絶対にソウヤさんにはバレてはいけないと思い、細心の注意を払いながら私はソウヤに協力した。
が…しかし…
それは…ソウヤさんに全てバレていた。
ソウヤさんは私とジュンセの秘密の育児を知りながらしばらく放置して私の様子を伺っていたんだ。
それに気づいたのはソウヤさんの部下が私の部屋に乗り込んできた時だった。
見覚えのある男たちが私の部屋の中を荒らすように荷物を勝手にまとめて、チビちゃんがいるにも関わらず私を引きずるようにして部屋から連れ出そうとした。
C「離して!離してよ!」
私がそうもがくとチビちゃんは泣き叫びながらその男たちにしがみ付き、男の足を小さな手で殴った。
「ちゃあちゃんをはなせぇーーー!!」
チビちゃんが危ない…そう思ってチビちゃんを抱きしめようと身体を起こそうとするが男に服を掴まれている私は動けない。
すると、1人の男が足にしがみ付くチビちゃんを離れさせるように足を振り払い、チビちゃんはその勢いで吹き飛ばされ壁に強く頭を打ち付けた。
C「チビちゃん!!」
私が男たちの手を強く振り払うと、私の頬に大きな手のひらが飛んできて、その衝撃で目の前は真っ暗となり頭がクラクラとした。
口の中には鉄の味が広がりいつも、ソウヤさんの右腕としてくっ付いている男が私に跨がり首を締めながら言った。
「ソウヤさんの元に来る事を拒んだら手荒なことをしてでも連れてこいと言われてるんです。今すぐ結婚して籍入れるってね…俺だってこれ以上俺はあなたを殴りたくない…俺たちの言うこと聞いてくれますね?」
C「なんならもう…このまま私のこと殺して……」
私がそう言うと男の手は緩みニヤッと笑って頬を撫でながら耳元で言った。
「あの人はあなたを殺したりなんかしない…あなたの前であいつ…ジュンセを殺すことはあっても…ね?」
男がそう言った瞬間、私がそいつの手を噛むと思いっきり拳で殴られ私は床に叩きつけられた。
「ちゃあちゃん!!泣」
チビちゃんの叫び声が部屋中に響くと同時に私の部屋のインターホンが鳴り、ジュンセが帰ってきたことを知らせ私は焦る。
すると、チビちゃんは男たちの目を盗んで玄関に走っていき、扉を開けるとジュンセの声が聞こえてきた。
「とうちゃぁあぁぁあぁぁん…泣」
チビちゃんの泣き声と共に焦りながらジュンセが中へと入ってきてるのが分かり、私の部屋にいる男たちは隠れ場所を探すように部屋の中を右往左往して焦っている。
しかし、そんな場所などこの部屋にはあるはずもなく、諦めた男たちはジュンセに立ちはだかるようにして私の前に立った。
J「な…なにやってんだよ…」
チビちゃんを抱いたジュンセはこの光景を見て何を思ったかな?
C「ジュンセ!チビちゃんを連れて早く逃げて!」
咄嗟に出た私の声…しかし、男たちはそんな俺の声を聞いて俺を睨み付ける。
「面倒なことしやがって……。」
そう言って1人の男がジュンセに近づき私はまた、叫んだ。
C「ジュンセ早く!!」
J「でも…!!」
C「チビちゃんを守るのが先でしょ!!」
ジュンセの腕の中にいるチビちゃんはジュンセの首にしがみ付きガタガタと震え泣いている。
ジュンセは仕方なさそうにチビちゃんを抱いたまま走って部屋を出て行くと、その背中を1人の男が追いかけもう1人の男が私の髪をガシッと荒っぽく掴む。
「ソウヤさんに…歯向かうってことですね?」
C「もう…限界……」
「限界でも…もう決まったことですから。」
男はニヤッと笑いそう言った。
すると、廊下の向こうから悲痛なチビちゃんの泣き叫ぶ声が聞こえ、ハッとすると男は諦めたように私の髪から手を離し部屋から出て行く。
私は慌ててその男の背中を追いかけると既にジュンセと男は睨み合っていた。
J「なにが目的でチアを……?」
「目的?目的なんてねぇよ。ただソウヤさんが……」
C「余計なこと言わないで!!彼には関係ないでしょ!」
私が男の言葉を遮るようにそう言うと、男はジュンセに舌打ちをして苛つきながらエレベーターに乗って消えていった。
ジュンセの顔を見て一気に力が抜けた私はその場にスルスルと滑り落ち床に座り込んだ。
J「チア…大丈夫?どう言うこと?あいつらソウヤさんの知り合いかよ…一体なにがあったんだよ…」
C「ジュンセには…関係ないから。私は大丈夫だからチビちゃんの所に行ってあげて…」
J「なに言ってるんですか…チアも一緒に…!」
C「こんな顔…チビちゃんには見せれないから……」
J「……分かりました。チビが落ち着いたらあとで来るから待ってて…」
ジュンセは私にそう言うと優しく私の髪を撫でながらチビちゃんの待つ部屋へと戻った。
私はジュンセが部屋に入るのを見届けると一気に涙が溢れ出し、なんとか立ち上がりながら無茶苦茶にされた部屋の中へと戻る。
やっぱり…
忘れるなんて無理だった…
会わずにいたから封印できただけのこと…
会ってしまえば愛しいと私の心が叫ぶ…
ジュンセ…
私…ジュンセのことをまだ愛してるよ…
助けて…
私はゆっくりとソファに座り荒らされた冷たい部屋の中で1人…涙を零したんだ。
つづく
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