第21話

チアside


C「ひとりでこの子の面倒…見れるの?」


そう口では言いながら本当はもう…自分がこの子を手放したくないと思い始めてる事に自分自身で気がついている。


J「事務所にも相談してみないと…なんとも…」


C「私も面倒みるよ。」


J「え?」


C「仕事…少し前に寿退社してしばらくの間暇だから…親が見つかるまで私が面倒みてあげるよ。チビちゃんおいで。」


この子は私とジュンセとの間に宿った小さな天使の「あの子」とは違う…そう理解していながらもなぜか、この小さな温もりが触れるたびに愛しくて私の心がこの子と一緒にいたいと叫んでいる。


J「一緒に…じゃダメですか?」


間抜けな顔して私にそう言ったジュンセは私が1人でこの子の世話をすると思っていたのだろうか?


私はそんなジュンセを揶揄うように頭をグイっと押した。


C「一緒に面倒見るって意味に決まってるでしょ!なんでジュンセのこと父ちゃんって呼んでる子供を私1人が面倒みるのよ…バカなの。」


私はそう言ってエレベーターホールへと向かった。


まさか、同じマンションで同じ階に住んでるなんて思いも寄らなかった私は、少し焦りながらどうかソウヤさんと鉢合わせしませんようにと心の中で祈った。


なのに…


そこにはタイミングよくと言うべきなのか…


なんなのか…


ソウヤさんが不機嫌な顔をして今朝、暗証番号を変えたばかりの私の部屋の扉の前で立ち尽くしている。


C「ソウヤさん……」


S「オートロックは指紋認証そのままだったけど…ここの暗証番号…変えた?」


C「え…あぁうん。防犯でね。今日は仕事だったんじゃ…?」


防犯なんてウソ。


正直、もう心が限界だと叫んでいてジュンセと再会してしまったからだろうか?


あんな抱かれ方にうんざりし恐怖を覚え暗証番号を変えた。


S「連絡取れなかったから心配で寄ったんだ。」


朝までいたのに連絡が取らないから心配で寄った…なんて…どこまで私を縛り付ければ気が済むのだろう…


私はそんな言葉に返事をする事なく俯く。


S「ジュンセくんもここのマンションなの?」


俳優として活躍しているソウヤさんとジュンセはそこまで親しい知り合いではないはず。


そんな事、私が1番知っている。


なのに、ソウヤさんがこんな馴れ馴れしくジュンセに声をかけるのは、私とジュンセの昔の関係を知っていて、それが私を縛りつけ屈折した愛し方をする原因だから。


J「偶然…引っ越してきて…じゃ。」


S「そう…その子は?」


ジュンセの腕の中で抱かれているチビちゃんを見てそう問いかけるソウヤさんにドキッと私の胸が跳ね、思わず私はソウヤさんの腕を掴んだ。


J「えっと…」


困惑してるジュンセに助け舟をだすように私が機転をきかせて口を開く。


C「子役目指してる親戚の子を預かってるんだって!ジュンセと同じ事務所に入るかもしれないんだって!」


J「そ…そうなんですよ…」


S「へぇ〜可愛い顔してるもんね…ジュンセくんそっくり。」


そう言ってソウヤさんがチビちゃんに手を伸ばした瞬間、チビちゃんはその手を避けるようにジュンセにしがみ付き、ソウヤさんは自分の腕を掴む私の手を軽く振り払った。


S「あはは〜そんなんじゃ芸能界やってけないよ?」


ソウヤさんは笑いながらそう言ったがその目は全く笑っていなくて、私に辛く当たる時と同じ目をしていて私は無言のまま、またソウヤさんの腕をまた掴む。


J「あはは〜ですよね〜失礼しま〜す。」


ジュンセは誤魔化すように笑いながら慌てて暗証番号を押して玄関の中へ入って行くと、ソウヤさんは一瞬にして真顔になった。


S「アイツ子供いたんだ。どう見てもあれアイツの子供だろ?今までアイツとチアとの関係心配して損した……あの年齢だと…チアは二股かけられてたってこと?」


C「親戚の子って言ってたけど私も詳しくは知らないし興味ない。そんな事よりソウヤさん仕事は?」


S「ん?あぁ…今から戻る。ちゃんとメール見たら15分以内に返信しないと許さないよ?分かった?」


C「ねぇ…ソウヤさん…」


S「ん?」


C「ううん。なんでもない。仕事頑張ってね。」


S「あぁ…。」


私は「もう別れよ。」そう言いたい気持ちをグッと堪えて笑顔でソウヤさんを見送った。


つづく

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