第14話
チアside
目が覚めた時には病院のベッドで、身体中が痛むなか私はなんとかベッドから起き上がった。
すると、横にはセイジさんがいて不安そうな顔をしていた。
C「セイジさんごめん。」
セ「怪我…大した事ないって。最近…寝てないんだろ?」
セイジさんのその言葉に苦笑いしながら私は軽く頷く事しか出来なった。
C「色々あって……チビちゃんのこと見てたら重なっちゃって…年齢も同じくらいだし…私このままでいいのかなって…」
そう言葉にすれば尚更、ジワッと涙が溢れてきて私は視線を落とすと、セイジさんも辛そうな顔をしてギュッと下唇を噛んだ。
セ「そうだよな……チアにチビの世話を頼むのが間違ってるよな…すぐ面倒見てくれる人探してみるよ。」
C「違う!違う…そういう意味じゃなくて……」
私の言葉にセイジさんは不思議そうに首を傾ける。
C「チビちゃんはさ…私の知らない誰かとジュンセとの間に出来た子供じゃん?ジュンセはそんなの心当たりないっていうけど…どこからどう見てもチビちゃんはジュンセの子供だし…あんな一方的な別れ方してジュンセが他の人とそんな事をしてもおかしくないんだよね……。最初はそんな現実が受け入れられなくてすごく腹も立ったし苦しくて耐えられなかったのに…私に甘えたり私に縋ったり…私を必要としてくれるチビちゃんがいつの間にか可愛くなっちゃって……離れたくなくなっちゃって…愛しくなっちゃった…私…ほんとバカだよね…もうすぐソウヤさんと結婚するのに…」
いつの間にか溢れ出す涙がポタポタとシーツに落ちて色をつけていき、震える私の手をセイジさんはギュッと握ってくれた。
セ「本当にあの人と結婚…するのか…?」
C「うん…結婚の日取り…予定より早まったの…もう今更どうすることも出来ない…」
私がそう言うと、何故かセイジさんの方が私よりも苦しそうな顔をして涙を流していた。
病院から実家に送ってもらう間、私はただぼんやりと窓の外を覗くのに、目につくのは子供連れの家族ばかりだった。
久しぶりに過ごす実家。
6年前
あの出来事があってから実家に帰る事が少なくなってしまった。
それは実家に帰ればまだ、捨てられずにいる色んな物が目に入り、いまだに「あの子」を思い涙を流してしまうから。
私はリビングのソファで横になっていると、いつの間にか眠りに落ちていてふと目が覚め、また、何かを思い出したかのようにあの部屋へと向かいそっと扉を開ける。
C「…久しぶりだね…」
この手で抱いてやる事が出来なかった19歳の私と17歳のジュンセとの間に授かった小さな天使。
そういえば妊娠が分かった当時の私は密かにお腹に手を置いてこの子のことを"チビちゃん"そう呼んでいた…
まさか数年後、他の女と作ったジュンセの子供を同じように呼んでるとも知らずに。
ジュンセは今でも私が妊娠していた事も小さな命を失った事も知らずにいる。
それは私がジュンセに何も言わずにジュンセに一方的に別れを告げ離れたから…
つづく
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