第13話
ジュンセside
しばらくするとセイジさんから連絡があった。
チアの怪我は大した事なく、手当てが終わったらチアの実家に送るとセイジさんから伝えられた。
そして、セイジさんはいつもとは違う声で俺に受話器越しに言った。
セ「大事な話があるから…事務所で待ってろ。チビはナリとミナグに面倒見ててもらえるか?」
J「分かりました…頼んでみます…」
そして、俺はチビをナリくんとミナグくんに預け病院から戻ったセイジさんの所に向かう。
セ「遅くなって悪かったな。」
そう言ったセイジさんの顔を見ればもう、付き合いの長い俺は薄々分かる。
今からセイジさんが俺に話そうとする話はあまり良くない話だと言うことが…
J「チアの怪我は本当に大丈夫ですよね?」
不安からそう問いかけるとセイジさんはやっと顔をあげ俺の目を見て話し始めた。
セ「怪我は大丈夫だよ…でも心はもう…限界かもしれない。」
そう呟いたセイジさんはギュッと下唇を噛みながらゆっくりと話し出し………
俺はセイジさんの話を最後まで聞いて、思わず息が止まりそうになった。
J「そ…そんな……」
セ「これは誰も知らない事実だ。チアはそれを思い出し不眠症になったのかもしれないし…他に原因があるかもしれない。でも、このままだと本当にチアの心が壊れてしまう。なぜ俺が今、この話をお前に伝えたか…分かるよな?」
J「俺は自分のことばっかりだったのに…当時のチアは…俺のことを思って別れたってこと…?」
セ「これを俺の口から伝える事が正解ではない事くらい俺でも分かってるし、あの時期にお前がチア以外の人間とそういう関係を持ったのかと責めてるわけでもない。ただ…そういう事があって今のチアは苦しんでるかもしれないと伝えたかったんだ。分かってくれ……」
そう言い残しセイジさんは部屋を出て行った。
セイジさんの話はあまりにも悲しくて残酷で…
その時、何も知らずチアに捨てられたと思い込み自分が1番不幸だと思っていた過去の自分を責める事しか出来なくて…
俺はナリくんとミナグくんに預けていたチビを連れてチアの実家へと向かった。
数年ぶりに訪れたチアの実家。
扉を開けるとおばさんがあの頃と変わらない優しい笑顔で俺を出迎えてくれた。
「久しぶりね…ジュンセくん…」
J「こんにちは…ご無沙汰しております…チアさんいますか?」
「今ね部屋にいるの…あら可愛いこの坊やは…?」
おばさんがそう言って手を伸ばすと、人見知りで顔を隠すチビは自然と俺と手を繋いでいた手を離し、おばさんにニコッと笑顔を見せおばさんと手を繋いだ。
「あら可愛い子ね。チアもこれくらいの時こうやって手を繋いでってよくせがんでたわ。ほら、上がって。」
そう言って部屋に上げてくれたおばさんはチビと手を繋いだままリビングへと連れていく。
「おばさんがこの子見ててあげるからあの部屋に行ってみて?そこにチアがいるから。」
俺はチビをおばさんに任せるとゆっくりとその部屋の扉を開けた。
つづく
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