第9話
ジュンセside
その日
俺は早朝から仕事で前日の夜、チビとチアと三人で食事を取り、チビがお風呂に入ってからチビをチアに預け、チビはチアの家で夜を過ごした。
そして、俺は次の日の早朝そのまま仕事に向かいチビとチアの2人で1日を過ごす事になっていた。
チビの話によれば朝起きてチアと一緒に公園でお散歩して買い物をして帰ってきたと。
一緒にお昼ごはんを食べてお昼寝をして沢山遊んで楽しかったのに、急に怖いおじさん達が来てチアを殴り痛めつけたとチビは震えながら話した。
J「そっか…ごめんな怖い思いさせて…」
チビをギュッと抱きしめてやると、チビはそのまま泣き疲れたのかすーっと眠りに落ち、俺はそっとベッドに寝かせてチビを起こさないように隣の部屋に住むチアの元に行った。
インターホンを鳴らすと下を向いて腫れ上がった顔のままのチアが立っている。
チアの背後に見える部屋は荒らされていてとても住める状況ではない。
俺はそんな状況にいるチアに言った。
J「…しばらくは俺の部屋に住んでください。」
C「ダ…ダメだよそんなの…こんな顔チビちゃんがびっくりしちゃうし…」
J「チビは大丈夫ですから…俺の部屋に来て…あとちゃんと話…聞かせて欲しい。」
俺がそう言えばチアは堰を切ったようにポロポロと涙を流し震え始めた。
俺はそんなチアを抱き寄せ、その荒らされた部屋から引っ張り出し俺の部屋に連れて入ると、チアはさっきまで泣きじゃくっていたチビと同じ顔をして俺のシャツにしがみ付く。
J「大丈夫…大丈夫です…俺がいるから大丈夫…」
玄関先で抱き合ったまま俺はチアの背中を何度も撫でた。
震えるチアの身体を抱きしめたまま部屋の中に入り、そっとソファに座らせて冷え切った身体にそっと毛布をかけ、またその身体を抱き寄せるとチアは俺の胸に身を任せるように寄り添った。
C「ごめん…ごめんなさい…チビちゃんを危険な目に遭わせてごめんなさい……」
チアは必要のない謝罪を繰り返し、俺はその頬に流れる涙を親指で拭いながらじっとチアを見つめる。
J「チアが謝らなくていいから…ソウヤさんと一体何があったんですか?」
すると、チアはソウヤさんの名前を聞いた途端…俺から目を逸らし、すっと俺から離れ距離を取る。
俺の手は一瞬でチアの温もりを失い手の行き場を見失う。
C「ちょっと…ケンカしただけだから……」
縮まったと思ったはずのチアとの距離はソウヤさんの名前を出した途端…元のぎこちない関係に戻り、俺はそんなチアの背中をため息混じりに見つめた。
J「ケンカしただけであんな暴力的な人を自分の婚約者の元によこすなんて俺はどうかしてると思いますけど。」
C「ごめん…ほんとに大丈夫だから…」
そう言ったチアの背中は微かに震えていて俺はもう…それ以上なにもチアに言う事が出来なかった。
俺はゆっくりと立ち上がり救急箱を取りチアの横に座り直す。
J「怪我の手当てしなきゃ。」
C「こんなの放っておいたら治るよ…」
J「いいから……!!」
チアの腕を引き寄せ俺に背中を向けたままのチアを振り返らせるとまだ、その瞳には涙がゆらゆらと揺れていた。
俺はその涙を見てみないフリをして、チアの綺麗な顔に出来てしまった傷を手当てしていく。
消毒液が滲みるのかチアはピクピクと身体を震わせていて、俺は優しくその顔に絆創膏を貼った。
J「ご飯は?まだ、食べてないんですよね?」
C「食欲ないから……」
チアはそう言ってつい、さっきまで俺に寄り添っていたその身体をソファに預ける。
J「ラーメン作るんでそれ食べて今日はもう休んでください。チビと一緒にあのベッド使っていいので。」
俺はそうチアに言い立ち上がると返事を聞く前にキッチンに向かいラーメンを作る。
お湯が沸く間、俺はセイジさんにメールをし送信し終えると、沸いたお湯にスープの粉を入れて麺を入れほぐしていると、いつの間にかチビが起きてきていてチアの膝の上に座っていた。
つづく
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます