第7話

ジュンセside


セイジさんの警察関係者の知り合いによって分かったことは、迷子や行方不明の子はいたもののチビとは条件が合わなかった。


チビ本人に名前を聞いてもチビちゃん!っと言うだけで自分の名前すらチビは言えなかった。


悪質な人からのイタズラかとも考えたもののチビが現れた日から特に変わったこともなく…


変わった事といえばチビに何かあった時の為にと俺はチアの新しい連絡先を手に入れ、毎日顔を合わせて「おはよう」と「おやすみ」を言い合うような仲になった。


俺が仕事のときはチアが隣の家で、チビをみて俺が家に帰れば、チアは俺の分までご飯を作って待ってくれていた。


これって…結婚じゃん…


なんて思いながらも寝る部屋は別々で俺は自分の家、チアももちろん自分の家で一枚の壁の距離がとても大きく感じ…


刻々とチアとソウヤさんの結婚の日取りは迫っているんだろなと1人悶々としながら真夜中を過ごしたりした。


チビは日によって俺の家で寝たりチアの家で寝たりしていた。


そして、ある日俺はチビと一緒に風呂に入っていて不思議な事に気づいた。


それは俺の右足とチアの右腕には2つ並んだ星ようなホクロが偶然あるのだが、なんとチビの右肩にも俺たちと同じようにホクロが2つ並んであったのだ。


それを見つけた俺は不思議な繋がりを感じながらチビの身体を洗った。


「とうちゃん〜!!しゃしん!いっちょにとりたい〜!」


風呂からあがり俺の横に座ったチビは俺に甘えるようにして俺のスマホを持ってきてそうおねだりをする。


生活を共にするうちにいつの間にか芽生えてしまった可愛いという感情のせいか?


俺がチビのわがままに応えてあげようとすると…


C「写真はダメだよ〜」


キッチンで俺たちのご飯の準備をしてくれているチアが言った。


俺は甘えるチビの頭をポンポンと撫でるとキッチンに向かいチアに並ぶように立つ。


J「すいません…ご飯の準備までしてもらって…」


C「これはジュンセの為じゃなくてチビちゃんのためよ。ジュンセのはついでだから気にしないで。」


自分でもそれは分かっているつもり…


チアはもう少しすればソウヤさんと結婚するのだから。


J「ついででも俺は嬉しいんですよ。」


つい、そう本音が漏れてしまうのはチアと別れる事なく、あのまま上手くいっていれば今もこうして一緒に並んで過ごせていたのかなと夢をみてしまうから。


C「でも、早く帰るなら連絡くれたら良かったのに…そしたら晩ご飯の準備もっと早くしてたのに…」


チアはチラッと俺の方を見ながらそう言って目が合うと、俺の胸はドキッと反応し思わずチアから慌てて目を逸らす。


そんな言い方されたら…


俺は馬鹿だから期待してしまう…


もしかしたらこのまま…


このままチビが俺のそばにいれば…


チアはソウヤさんとの結婚をやめて俺のそばにいてくれるんじゃないか…って。


そんなありもしない事を考えては自分に苦笑いをする。


「ねぇ〜ねぇ〜とうちゃんは〜ちゃあちゃんがすき?」


いつのまにかキッチンのカウンターの椅子によじ登り、カウンターから顔を出したチビが俺にそう問いかけ、思わず俺は動揺する。


J「はぁ!?い…いきなり何言ってんの!?」


子供相手にそうマジで回答するとそれを聞いたチアはクスッと堪えるようにして笑った。


「じゃ〜ちゃあちゃんは?ちゃあちゃんはとうちゃんのことすき?」


C「うーんそうだね。好きだよ。チビちゃんの次に好き。」


「やったぁ〜チビがいちばん!!」


チビはチアの言葉を聞いて無邪気に喜んでいる。


そんなチビの姿をチアは優しく見つめていて俺はそんなチアの横顔に見惚れる。


J「…やっぱ忘れらんねぇよ…」


思わずボソっと口に出てしまった俺の言葉にチアは気づき一瞬にして真顔になる。


C「さぁ、ご飯できたから食べようねー!」


チアは何事もなかったかのような顔をして出来立てのおかずをダイニングテーブルに置き、チビをちょこんと椅子に座らせた。


C「食べないの?」


チアはキッチンの方へ振り返ると俺に問いかけた。


J「たべます。」


俺がそう言ってダイニングテーブルに向かうと、チビがまた俺のスマホを勝手に持ちカメラに切り替える。


「しゃしんとりたい〜とうちゃんとちゃあちゃんと3にんでとりたい〜」


チビは半泣きになりながらチアにお願いをすると、チアはさすがにそんなチビの姿を見て小さなため息を落とす。


C「ちゃあちゃんは一緒に写真撮ってもいいけど父ちゃんと撮っちゃうとお仕事でね?困るから……」


J「俺は大丈夫ですよ。チビもこう言ってるんで撮りましょう?」


なんてチビを口実に使っただけで、チアとの写真なんてもう二度と撮ることが出来ないと思っていた俺からすれば、チビはナイスアシストでしかない。


C「本当に大丈夫なの?もし、その写真誰かに見られたりでもしたら…」


J「チビは芸能界を目指してる俺の親戚の子…チアがそう言ったんだよ。だから大丈夫です。」


俺はそう言うとチアは笑いチビの横にきた。


C「じゃ、1枚だけ3人で撮ろうね?」


「やったぁぁぁあぁぁあ!!」


俺とチアは大喜びのチビを挟んで一緒にカメラの中への入った。


J「じゃカメラ、父ちゃんに貸して。撮るよ?はいチーズ!!」


そうして撮られた写真は俺のスマホのロック画面となり、俺は仕事の合間にそのロック画面を見てはニヤニヤと過ごすようになった。


そして、俺は全く気づかなかったが写真を撮った後、私も欲しいと言うチアにその写真を送った数日後…


チアのスマホのロック画面も俺たち3人での写真となり、それに気づいた俺からは自然と笑みが溢れた。


つづく

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