第97話 存在らの恋
*・*・*
寄り添う存在から、見守るだけの存在へと形を変えるのはいつからだろうか。
宿主の異能力を繋ぎとし、先の世の未知なる食事を生み出すにまで至った……その存在は、やがて別の九十九との恋を覚えた。
あちらも気持ちを自覚し、お互いを確かめ合った。故に、九十九同士の恋を成したのだと。
「りょ、
『ああ。お前たちのように、我らも共に歩んでいきたい』
『是』
「……九十九同士の恋など聞いたことがないぞ」
「けど……梁たちは本当のようですし」
気持ちを踏み躙ったり、拒絶しようとは思わないがなにぶん聞いたことのない事実だ。普段は澄まし顔のように見える雷綺が、梁にべったりと寄り添っているところを見るとこれは本気の出来事なのだとよく分かったが。
果たして、世間的にはどう受け入れられるのか。それをどうにかしようと
「…………九十九同士の恋、だと?」
「雷綺がこんな状態だ」
再び顕現させれば、梁にべったりの雷綺の登場。流石の皇帝でも顎が外れそうなほどに口を開けてしまうほどだった。
「……おいおい。これ正夢か?」
『
「いや、認め……るのはいいが、お前そんな性格だったか?」
『梁だからだ』
「……あ、そう」
今までにない出来事については、何とか受け入れることとなり。九十九同士の婚姻を認める事となった。
その事実はとてもめでたいので、恋花はさっそく二人への
生地はいつも通りの白いものだが、生地をまとめるだけでなく芯に黄油を棒状にしたものを使うのだ。細長い生地に巻きつけ、焼く前には岩塩を少々ふりかけてから焼く。
異常に油でベタつくが、紙に巻いて食べればジュワッと広がる食感が素晴らしい麺麭と仕上がった。
『『美味!』』
「遠慮なく食べてね」
「こりゃいいな! おかわり!」
「駄目です、陛下。これは二人の麺麭ですから」
きっぱり言うと、皇帝はぽかんとしたがすぐに苦笑いに変わった。
「呼び方以外は、昔のまんまだな?」
「ふふ。おかしいですか?」
「いいや。おどおどしてるよりずっと良い。紅狼もいるお陰だな」
「……褒めているのか?」
「おう。俺は先に子どもの親になるからな! 年長者のように敬え」
「いやです」
「ごめんこうむる」
「なんでだよ!?」
関係が元通りになるとまではいかないが。
幼い頃の、あの時の生活が新しく始まるのなら……こう言う関係があってもいいと素直に思えた。
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