第15話 妹分のような
*・*・*
幼い。
かつて、皇太子になる前から皇室の人間であろうと関係なく、自分を厳しく叱ってくれた数少ない存在……
面影は少しあったが、あの勝ちな性質だった玉蘭とは違い、自信無さげで大人しい印象を受けた。玉蘭とは真逆と言っていい。それも仕方ないことだ。紅狼に聞いたが、この少女には今横にいる
(……であるからこそ、俺が導いてやらなくては)
表立っては動けばないが、玉蘭のために……そして、朋友であり己の剣でもある紅狼のためも考慮して。
さらに、この少女も導いてやらなくてはいけない。皇帝であるからこそ、小さな存在も見過ごすつもりはないのだ。
「恋花、ひとつ頼みたい」
だから、この少女にそれなりの仕事も与えてやらなくては。恋花を呼ぶと、彼女は表情を少しずつ驚きから冷静に切り替えようとしていた。それもまた面白いが、今は笑っている場合ではない。
「はい、主上」
「我が皇妃候補……
「! この……
「ああ。きっと気にいるだろう」
顔つきから察するに、もっと美味い作り方があるだろうが道具が整っていないので無理だろう。そこを今から作り替えては時間がかかる。そのため、斗亜は愛しい妃に今食べたのと同じのでも食べてほしかったのだ。
「……かしこまりました」
恋花はぎこちないが、最敬礼をして承諾してくれた。その様子に、妹が出来たようで頭を撫でてやろうとしたのだが何故か紅狼に阻まれた。
「彼女は子どもではない」
隻眼の鷹。
などと、後宮に出入り出来る立場の男ではあるのに、誰にも靡かぬ宦官のような無愛想男が。このように、成人して間もない少女を気に入ったのだろうか。玉蘭の封印の件もだが、随分とこの少女に尽くしているようだ。少し面白いと思い、斗亜は声を上げて笑った。
「わかったわかった。たしかに、恋花は子どもではないな?」
とは言え、斗亜とてこの少女を幾らか気に入ったのだ。人間としてもだが、技術を持つ者として。実力をきちんと持つ者を斗亜は無碍な扱いにしたりしない。
とりあえず、問題は山積みではあるが。
少しの楽しみが色々と増えたのは、嬉しかったのだ。
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