第10話 鈴木Fさん

 文学フリマにもそんな未知なる才能のある書き手さんがいらっしゃる。文学フリマ福岡で一押しの鈴木Fさんの詩や小説の世界は思わず、『アマチュア物書きすげえ』と唸ったほど。鈴木Fさんがプロになっていないのが不思議なくらいだが、ひょっとしたら次に来る作家さんになるかもしれない。実は私がいいと思った書き手や作り手の人が後にブレイクしたケースが結構ある。

 今年の新潮新人賞の最終候補になった栗山真太郎さんは文学フリマで気になっていた作家さんだった。少年憧憬社というブースで文学フリマに参加する栗山さんのネットにアップしている作品を読んだところ、『これ好き!』と思って陰ながら応援していた。そんなことで栗山さんが難関の新潮新人賞の最終候補にギリギリまで競っていたと知って、嬉しかった。

 文学フリマで出会い、いいなと思った書き手さんの中に豆塚エリさんもいらっしゃる。豆塚エリさんと文学フリマで出会ったのは今から十年近く前のことだ。豆塚エリさんは高校時代に自殺未遂でアパートから飛び降り、頚椎損傷になり、現在は車いすになっている。豆塚エリさんが文学フリマで手売りしていたとき、印象に残ったのを覚えている。そんな豆塚エリさんが本を出版し、今、反響が多くある書き手さんになったなんてあの頃の私でさえも信じられなかった。

 大きな例だと又吉直樹さんもそうだった。又吉直樹さん本の紹介のエッセイの連載をしていた雑誌・ダヴィンチのバックナンバーを今でも持っている。又吉直樹さんの豊富な読書量に舌を巻いた。まさか、あんな芥川賞大フィーバーになるなんてその時は信じられなかったけれども。

 ほかにも『君の名は。』でブレイクする前の新海誠監督作品が好きだったこともあった。(『星を追う子供』が好きだった。)『君の名は。』で脚光を浴びる前、新海誠監督は無名の存在に近く、まさか、あんな風になるなんて信じられなかった。

 だから、このジンクスが正しければ、紹介された書き手の方はどうなるのか、分からないと思う(笑) もちろん、主観ではあるけれども何度もそんな体験が続くので推している作家さんには日の目を見てほしい。

 鈴木Fさんは本当にすごい。改めて鈴木Fさんの詩集や小説を読み返して打ちのめされた。自分の語彙力の無さに打ちのめされるくらい、鈴木Fさんの語彙力は異彩を放っていた。世の中にはこんなすごい言語世界を奏でられる偉才がいるんだ……。

 文学フリマには読み応えもあって面白くて、プロ顔負けでたった一つの宝物のような作品がたくさんある。アマチュア物書きの筆力が格段に上がり、プロと変わらない書き手もたくさんいる。


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