第3話 内情

 ラグーナ出版を通して、出版社の内情を多く知った。ラグーナ出版のスタッフの中にはカクヨムを運営している角川書店出身の方もおり、遠い存在だった出版業界の悲喜交々を知った。出版不況と言われる時代に本を売るのがどれだけ大変なのか、本一冊を制作する喜びを知り、大変勉強になった。

 ラグーナ出版の社長の川畑さんに何度か自作の作品を読んでもらい、アドバイスをもらったこともある。川畑さんはかつて大手出版社で編集者をされていたことがあり、親の介護で鹿児島県に帰って来たことを契機にラグーナ出版を設立した。川畑さんに自作を読んでもらい、『このまま出し続けて。どうなるのか分からないから』と真面目な顔で言われたときは本当に驚いた。

 小説家なんて夢のまた夢で途方もない夢のように感じたからだ。しかし、川畑さんは大手出版社で働いていた経験もある編集者だ。本来ならばそんな方に直接話が聴ける機会だってなかなかないのに私は本当に恵まれている。しかも、雑誌に自作を載せてもらえているのだから余計に恵まれている。川畑さんの言葉を信じ、何度、落選してもそのたびに立ち上がり、現実とも折り合いを付けながら創作活動をしている。

 ふと思った。京都アニメーションの事件のようにラグーナ出版も出版社なのだから万が一、放火でもされたら……、と思ったら急に鳥肌が立った。関係ないわけがない筈ではない。京都アニメーションの事件はあまりにも悲しく、『涼宮ハルヒの憂鬱』を始めとするシリーズを発刊している角川グループの怒りや悲しみは計り知れないと思う。創作には光と影が付き物とはいえ、あの犯人がした過ちは絶対にやってはならない。

 何度も落選して悔しいのは多くの人と同じだ。落選が続き、夢を諦めた人も多いだろう。しかし、その中でもその悔しさをバネに活動する人たちもいる。それは同人誌即売会の文学フリマだ。

 

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