第2話 ラグーナ出版『シナプスの笑い』

 それから、再び、私はぎょっとなった。大阪のメンタルクリニックで放火事件が発生したのだ。今度の場合は自分が加害者になるという発想よりも自分が事件に巻き込まれるのでは、という発想が浮かんだ。怖い、怖い。今度の悪寒は自分が被害者になるのでは、という怖さが浮かんで受診の日が怖くなった。ああ、そうだ。京アニのスタッフさんも同じ気持ちだったんだ。あのメンタルクリニックの患者さんも京アニのスタッフさんも同じように死にたくない、と思いながら炎に焼かれて亡くなったんだ。

 あの犯人は多くの落選した人と違い、他の方法を考えたり、感謝したりすることを覚えなかったのだろう。多くのアマチュアがぶち当たる壁に対して放棄していたのだ。色々と対処法を生み出す私はあの犯人とは違うし、私は絶対に人を傷つけない。落選した悔しい気持ちだってこのエッセイにして昇華してやる。

 あの犯人も小説投稿サイトにアップした、と報道はあるが、いくらレビュー数がなかったとはいえ、根気強く活動していれば一人でもファンが付いてくれたかもしれないのに、と残念でならない。むしろ、諦めるのが早すぎる。せめて、一年は続けないと結果は出てこない。

 もし、一度もレビュー数がなかったとしたら対策を講ずれ場良かったのだ。読み専になり、多くの作品を読めばお返しで自分の作品を読んでくれる人が一人でもいたかもしれない。精神科通院していたら仲間はいたはずだ。その読んでくれる仲間を大事にすればあんな自身も大怪我を負うような過ちをせずに済んだかもしれない。もちろん、私がこんなに分析しても失われた命は帰ってこない。大阪の精神科放火事件と同じように一度、失った命は元には戻れない。

 話は変わるが、実は私は本を出している。縁あって、鹿児島県にある、ラグーナ出版が発行するメンタルヘルス文芸誌、『シナプスの笑い』で小説を連載しているのだ。ラグーナ出版は精神疾患当事者が運営する世界で唯一無二の出版社で、A型事業所の出版社でもある。『シナプスの笑い』は現在、五十一号まで発売しており、私は四十六号から小説『夕暮れ散歩』を連載している。原稿料はもらってはいないものの、コード付きの本で拙作を全国出版してもらえるのはとても有難い。

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