余章 あの日までのみんな
4年前 神鏑木 練
大学から帰ったら、親が『ダンジョン覚醒者調査への参加のお願い』って封書を寄越してきた。差出人は、区役所。
去年くらいから世界に現れた「ダンジョン」っていうところで、超能力が使えるようになる人を探しているらしい。役所までテストを受けにきてほしいとか、すごく簡単だし石に触るだけだとか書いてある。
俺は行ってみることにした。
入学したはいいけど大学は面白くないし、仲が良かったじいちゃんとばあちゃんが死んじゃってからは家の中が変な感じだし、毎日漠然とつまんないから、もし合格したら、学校にも家にもいなくて済むんじゃないかと思った。
調査用の石は、俺が触った途端、役所の外まで届くくらいに光を放った。
『最高ランク』だって大喜びされて、ここならやってけるかなと、淡い期待を抱いた。それが間違いだった。
能力の確認で白い部屋に入れられた時は、部屋ごと燃やしそうになって焦ったけど、消化液をかけられたことの方がショックだった。すげー臭かったの、今でもよく覚えてる。
二度とそんな目に遭わないためにも、毎日めちゃくちゃトレーニングして、炎の出力を完璧にコントロールできるようにした。
これで少しは居心地良くなるかと思ったのに、問題は違うところにあった。
みんなで揃って食事、トレーニング、座学。休憩中は、面倒臭い意味のないおしゃべり。気がついたら、学校生活に逆戻りしたみたいになってた。
俺は二世帯育ちで、北海道生まれのじいちゃんとばあちゃんと仲良かったせいか、言葉が変らしい。クラスメートに大笑いされてから、同年代とは話したくないのだ。
でも黙って端っこに座ってると、そういう雰囲気が好きっていう女子が寄ってくる。それも面倒臭い。
俺はとにかく強くなりたい。
強くなって、誰かに必要とされる存在になりたい。
どうしてみんな真面目にやってくれないんだろう。
好きだ嫌いだって、ダンジョンで命かかってる時にやることかよ。
俺は何度目かのミッションで、ついにキレて怒鳴った。
その時はまだ子供で、怒鳴る以外に方法を知らなかったから。
指導役に就いていた獅子戸さんに諭されて、それ以来、ムカついても我慢することにした。
我慢して仕事してれば、そのうち自分の〝本当の居場所〟に行けると思ってた。
なのに。
千葉って、初心者ダンジョンじゃん。
なんだよ、クソ。
しかもおっさん守れとか。
俺はきっと、見捨てられたんだ……
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