26.恋慕
R side
「「「おかえりなさいませ」」」
「おかえりなさいませ、レティシア様」
「ただいま」
“ 体調は大丈夫ですか? ”
翌日、公爵家に帰宅すれば、侍女達、そして、スレンダが出迎えてくれた。心配させたことが、見て取れる。ローレン公爵家には、“ 体調が芳しくない為、王城で様子を窺う ”旨が伝えられていたから。
「うん、大分楽になったよ。母様は?」
「奥様は、庭園にいらっしゃるかと」
「そっか。後で顔を出すよ」
「…ご無理は、なさらないで下さい。大事をとって、休まれた方が…」
「ありがとう、スレンダ」
“ 何かあれば、言って ”
そう言い残して、足早に自室に戻った。
◇◇◇◇◇
ガチャッ パタン…
扉に背を預ければ、身体は、ずるずると下がっていった。合わせた指先を口元に、天を仰ぐ。
ぼんやりとした記憶に、夢か
『レティ…、レティシア…、ッ』
・
『好きだ…、』
・
『…かわいい』
・
『俺の…レティシア、』
・
『愛、してる…ッ』
「かっこよかったなぁ……///」
「ふふッ、///」
ぼふっ、と
◇◇◇◇◇
『ん、』
目を覚ますと、すっかり
完成された美貌が、どこか あどけなくて、胸がキュンと鳴いた。無防備に眠っている姿に、優越感を覚える。
『……僕だけ…、ふふッ///』
『何が?』
『わ、ッ』
余韻に浸っていると、パチッと碧眼が開いた。ぐいっ、と抱き寄せられ、胸に顔を埋うずめれば、スイートオレンジが香った。
『レティ、?」
『ふふッ、幸せ//』
『はぁぁぁ、可愛過ぎ』
ぎゅーっと抱きしめる力が強くなった。
『愛してるよ』
そう言って、額に口づけられる。
好きが溢れて、“ この幸せが、ずっと 続きますように… ”と切に願った。
◇
名残惜しかったけれど、シオンは、公務が控えていた為、身支度を済ませ、二人で朝食をとった後、素直に帰路に立つ。
『痛くない…?』
『無理はしないで、ゆっくり休むこと。分かった?』
心配事が尽きない彼は、ディルクに任せて、王家が用意してくれた馬車に乗る。
窓から 彼に向かって、
あいしてると口パクで伝えれば、
『なッ、///』
不意打は、成功したらしい。
◇◇◇◇◇
「……好き、……ふふッ///」
枕元に置いていた 猫のぬいぐるみ を抱き、抑えられない感情に、足をジタバタさせる。
「……ずっと、好きでいてね…//」
________________________
? side
薄暗い部屋。
窓辺に零れた光が、人影を形作っている。
少年は、机に置いた資料を、ゆっくりと指で辿っていく。白く、柔らかな髪が、長い睫毛まつげにかかる。瞳が射抜く先は……、
「シオン・アルフォンス…、レティシア・ローレン……か、」
コンコンッ ガチャッ
「失礼致します。-----様、-------様が、話があると」
「分かった」
グレーがかった瞳には、強い意志が宿っていた。
幸せは、永遠か、一瞬か__________________
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