番外編
番外編①
時間軸▶︎▶︎▶︎[王宮編:9.婚約者はレティシア・ローレン]後となっています
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魔力暴走事件をきっかけに、指導係、侍女、侍従が、
それに、レティシアは、現段階で習得すべきとされている内容以上に、知識、作法などを心得ていた。従って、カリキュラム、スケジュールなど、妃教育に関わる すべてを見直さなければならなかった。
「他に任せらんねぇしな…、」
コンコンッ
第一王子室で、計画書を作成していると、扉が叩かれた。
「ルーク・ローレン公爵子息様がいらっしゃっています」
「…ルーク、が?」
“ 失礼致します ”と告げられて、扉が開いた。
「訪問に際して、事前にご連絡せず、申し訳ありません。早急に、殿下にご確認いただきたい書類がございまして」
「構いませんよ」
隣に配置されている
レティシア 同様、艶やかな黒髪を揺らす青年は、洗練された所作で、紅茶を口にする。三歳差とは思えない程に、大人びて見えた。
「それで…、書類というのは」
カップをソーサーに戻して、机に置く。ゴソゴソ、と鞄に入れていた書類を取り出した。
おい、待て……多くないか
俺にとっては、“ 手渡される紙類 = 公務 ”だ。提出期日に追われるであろう姿に、ゾッとした。
「これは…?」
「弟に関する取扱説明書になります」
「…………は、?」
ドサッ、と分厚い紙束が、机に置かれ、口にされた内容に、思考が停止する。
【 取扱説明書 】
・・・ 機器、製品に関する操作方法などを説明する冊子など。製品取扱前、又は使用中に、操作方法、エラー対処法を調べる為に、使用が想定された冊子など。
文字列が、脳内を無機質に横切っていく。
人間に使う言葉じゃねぇ…よな、
「弟と婚姻するに際して、必要かと思いまして」
“ 色々と…ありましたから ”
そう、呟いた彼は、視線を落とした。
伏せられた長い睫毛に、時折 レモンクォーツを彷彿とさせる金眼が透けて見えた。
その優艶さに、子息令嬢が目を奪われ、色香に
伊達に、乙女ゲームで“ ミステリアス ”担当を担っている訳じゃない、ってことか
何せ、俺は
それに、ローレン公爵家と関わる際は、現公爵と対峙することが多い為、ルークと話すことは、滅多にない。多少、挨拶を交わす程度だ。
・
視線を、差し出された紙束に戻す。数枚が、冊子に纏められていた。
ざっと十冊…ってとこか
““レティシア・ローレン[齢 六歳]
ローレン公爵家 次男
闇属性 所有
・
鶏肉を使ったフリカッセが 好物
強がっている際には、下唇を噛む癖がある””
一冊 手に取って、パラパラと確認すれば、氏名、出生といった基礎情報に次いで、好物、思考傾向、癖など、長年を共にしなければ、分からないような内容が記載されていた。
乙女ゲームでは、ルークは、弟を
公爵家という権力を振い、第一王子に執着し続ける弟に、“
嫡男として、公爵家を守る為に、彼は弟を見捨てたということだ。
「弟は、心優しい性格故に、傷付きやすいです。自己嫌悪に陥り、精神を不安定にすることだって多いです」
だが、現実は 正反対だった。ルークは、これから先、レティシアが傷付くことを憂いている。
「ですが…、」
ふっ、と笑った後、視線を戻した。
「弟は、殿下と出会って、強くなりました。それ故…貴方を失えば、弟は……」
声が、
“ 弟は…壊れてしまう”
それを言えば、必然的に、俺を縛り付けることになる。王家に仕える臣下として、
「俺は、レティシアを離しませんよ」
その言葉に、ハッと目を見開いた。
「弟を、宜しくお願いします」
そう、無邪気に笑った。目尻に浮かべた涙が、弟を思っていることを証明付けている。
「必ず 幸せにすると、約束します」
刹那、彼の胸元が、照明を反射させ、光った。
公爵夫妻から贈られたであろう、レモンクォーツが装飾されたネックレス。
石言葉は……、“ 明るい未来 ”
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