* ワタシノセカイ


 緩くウェーブがかかった、ふわふわと揺れる桜色に、

 アイスブルーな瞳が可憐な、庇護欲を唆そそる美少女。


「や…、やったぁ!!!」


 頬をぺたぺたと触れて、夢かうつつかを確認し続けていた。かれこれ、30分は経っている。


「ちょっと、!!私って誰!名前は!!」


 壁際に立っているメイド(?)に声をかければ、首を傾げつつ、答えてくれた。


「エマ様は、先日 フォスター男爵家に養子となられました。由緒正しき男爵令嬢にございます」

「エマ…、フォスター」


 復唱すること、3回。



 間違いない、異世界転生だ




 前世で、絶大な人気を誇っていた乙女ゲーム

【一瞬の永遠を、キミと 〜 聖なる魔法と恋人達ラバーズ〜】


 光属性魔法を発現させたヒロインが、王立学園を舞台に、攻略対象者達と恋に落ち……きゃぁぁ///


 金髪・緑眼なクーデレ【ルカス・トーリ】

 赤髪・赤眼、不器用な【ディルク・オスト】

 黒髪・金眼なツンデレ【ルーク・ローレン】


 そして!!

 完全無欠な第一王子【シオン・アルフォンス】

 さらさらと輝く銀髪に、冷酷さを纏う碧眼。



 ……彼が大好きだった



 クリアすれば、リセットして、制作会社がグッズを展開すれば、無限に回収して、イベントが企画されれば、睡眠時間を削って、没頭した。

 イベント初日は、有給を使い、パジャマ姿でゲーム、がルーティーンになっていた。


「……シオン、様…///」


 ぽぅっと妄想にふけっていると、コンコンッと扉が叩かれ、ふっくらとした男性が現れた。



 彼が、私を引き取った男爵ね



「エマよ、夜会で着るドレスは決まったか」

「はい!」

「そうか。ソフィア、エマを夜会一可愛い子に」

「承知致しました、旦那様」


 頬を緩ませて、頷いた後、男爵は部屋を出て行った。



◇◇◇



 侍女が、ドレスを用意する為、ウォークインクローゼットに向かう。


 窓に視線を移せば、薄暗くなった空が

刻々と“ 出会い ”が近付いていることを告げていた。


 正真正銘、私がヒロインな世界だ。



「……待っててね、シオン様 //」


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