ニンジャ!ニンジャ!シュシュシュ!!
ごいし
イエス!ニンジャ!
おれはニンジャだ。凄腕のニンジャ。
むっ、敵襲か。この隠密任務も楽じゃないぜ。
切りかかってきたやつのニホントーの一太刀を、無刀取り。素手でニホントーを奪ってやった。凄腕ニンジャのワガハイになれば、造作もないこと。そのままニホントーの柄で喉をひとつき。相手は失神する。
あまりの手際の良さに、他のやつらもびびっちまってる。ひい、ふう、なるほど、ざっと30人か。通路がびっしりとサムライで埋まっちまってる。隠密任務も楽じゃないぜ。本当に隠密ってのは大変だ。小腹が減って、どっかの部屋のお膳に舌鼓を打っていたら、どうやら、おれのネームがこの城のインフルエンサーになっちまったようだ。みんなおれにゾッコンみたいだな。
だったら、ファンサービスの時間だ。
おれの忍法をしかと拝んでいきな!
火遁の術!
通路の床板を高速でひっぺがし、ひっくり返す。サムライたちが泡くって梁にしがみついてやがる。
火遁の術!
ふわりと宙に浮き、通路だった空間をゆうゆうと渡っていく。サムライに向かって屁をこきながらな。ざまあみやがれ。
めざすは姫のいるところ。もう本丸御殿はだいたい見回ったんだが、どこにもいない。なぜだ。凄腕ニンジャのインフルエンサーのおれが見つけられないはずがない。
そうか!あまりに恥ずかしいから、隠れちまってるんだな!その心、サーチしてやるぜ!
火遁の術!
おれのハートはヒートアップ。きみのハートにノックアップ。サムライたちはあっぷあっぷ。みんなでおれにギブアップ。
むむむっ。姫の存在を検知しました。どうやら、隣国の所領に逃げ込んだようです。むむむっ。
おー、しっと!!なんてこった。そこまで恥ずかしがらなくたっていいじゃないか。おれはきみにゾッコン。きみもおれにゾッコン。なら、答えは一つだろう?!レッツメイキングラブじゃないか!
火遁の術!
城の壁をぶちやぶり、屋根に出る。瓦がゴツゴツしてて、足つぼを刺激するぜ。ひんやりいた気持ちいいってやつだ。
どうにかして、姫のいるところまでいかなくては。いったいどうやって。
でも、おれはニンジャ。どうにもこうにもやりようはあるってもんさ。
火遁の術!
足つぼマッサージでリラックスしちまった足に精霊の力をガンガン流し込んで、強化爆発おれの足はニトログリセリン並みのパワーをためこんでるぜ。そして、その足で、姫のいる方向に、ダッシュ!!全開ダッシュ!!風を切り裂き、漆黒の弾丸となって、国境をぶちやぶってやるぜ。
しまった!!角度をあやまってしまった!
ニンジャにあるまじき失敗。このままでは、手前の森に突っ込むしかねえ。
だが、ニンジャだから、大丈夫。
そのまま着地した。
着地点の半径50mの地面はめくれあがり、吹き飛んでしまった。この星にひとつのクレーターを作っちまったぜ。ついでに、国境の関所もおじゃんになっちまった。通行手形を入手するのに、商人に大金はたいて、盗まれて、賊に頭下げて、辱しめを受けて、耐えぬいて手に入れたってのによお。なんのためだったんだよお。
そう、姫に会うためさ。この愛を未来永劫にわたって、末長く育てていくために、おれには姫が必要なんだ。
んっんー。姫はどこにいったのかな。馬で走っているころだろうから、だいたい、道にそって行けばいいだろう。
火遁の術!
射放たれた矢のように、ニンジャ、走る、走る。
道の木々をソニックブームでなぎ倒し、猪突猛進。全ては姫のために。
見えた!
一団を飛び越え、目の前に立つ。あと50m。
馬上のサムライは、馬の手綱を握り、身を屈めると、さらに速度をあげる。それにひるむニンジャではない。睨み付けるニンジャ。その、ニンジャを二頭の馬は、避けて通り抜けた。素晴らしい馬術。馬に一抹の不安も与えずに、走り抜けるとは。
ニンジャ、サムライの気迫に感服。
しかし、捉えたものは逃がさないニンジャ。
あとを追って走る。
馬のけつを見ながら走るニンジャに、馬の蹴りあげた土が被る。ニンジャは不快指数の上昇をこらえながら、追走を続ける。ニンジャの精神は、並みではないのだ。
城が見えてきた。あの城に入るつもりか。
ニンジャは追走を続ける。なんの思惑なのか。
開門!
門の周りのサムライたちが、戦闘態勢を取る。弓をかまえその矢じりは、ニンジャを捉えている。
今だ!
馬が門をくぐろうか、というタイミングで、ニンジャは加速し、斜め上空へ飛び上がった。馬を追い越し、石壁を貫く。ニンジャの勢いは止まらず、二の丸を飛び越え、城の反対まで突き抜けてしまった。
大丈夫。ニンジャにも誤算はある。
さあ、姫との鬼ごっこの再開だ。
もう半年続くこの鬼ごっこ。
しかし、ニンジャは諦めない。
隠密できない恋心を抱えていられない。
立ち止まれないニンジャの恋の鬼ごっこは続く。
ニンジャ!ニンジャ!シュシュシュ!! ごいし @goishi
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