第2場・船倉でえちえちな誘惑デス<❤>
……数時間後、私は船の上にいた。
野営地から歩かされ、やがて潮の匂いと海鳥の鳴き声がしてきた……と思ったら船に乗せられていたのだった。
途中の景色を見たかったが、大きな布袋を頭からすっぽりかぶされていたので様子はわからなかった。
袋が外されたのは、薄暗い船倉に閉じ込められたあとだった。
驚いたことに、袋を外されると同時に身を覆っていたぼろ布のような服まではぎ取られた。
もう完全に丸裸だ。
さすがにこれは恥ずかしかった。
胸や股間を隠そうにも後ろ手に縛られているので出来ない。
真っ白で陶器のように澄んだ肌が晒された。
恥ずかしさに身もだえしつつ、私はしゃがみ込むことしか出来なかった。
むきだしのお尻が床に触れてひんやりした。
「誰なんだこいつは?」
私の服をはぎ取った女はニヤつきながら、傍らに立つ隊長に尋ねた。
「ずいぶん上玉じゃないか?」
「……娼婦にされるただの捕虜だ。何事もなくアモルに送り届けろ」
隊長はそっけなく返事をした。
「誰かは詮索するなと、そういうことか」
ニヤつき女は得心したように頷いて見せた。
──なるほど、私の行方はこうして徐々にぼやかされていくのだな。
そう感じた。
天井の向こうから人々の掛け声がした。
出航らしかった。
「最後に景色くらい見せてやりたかったが、止むをえん」
隊長は若干憐れむような口調で言った。
「全て忘れることだ」
言い残すと、船上へとつながる階段梯子を上って姿を消した。
そこだけ外界の明かりが差し込んでいて明るかった。
……忘れるも何も、私はまだ自分が何者かすらわからないのだ。
感傷に浸る事などできない。
確かな事は、どこかの異世界で見知らぬ姫になっている。
これから娼婦として売り飛ばされようとしている。
武器はなに一つ持っていない。完全に丸裸。
要するに四面楚歌だ。
……さて、どうする?
心を落ち着けるために楽な姿勢で座りなおし、
まずは周囲を確認してみることにした。
薄暗い船倉には木箱や布袋が積まれている。
そこから、ふんわりといい匂いがしてきていた。
中に果物が入っているようだった。
甘い香りでおなかが「ぐ──っ」と鳴った。
それから、自分の身体を改めて見直してみた。
……やはり美しい……
場違いだが、正直な感想を抱いてしまった。
見下ろした視線の先に見える二つのふくらみは実に柔らかそうなカーブを描いているし、つんとしている乳首は鮮やかなピンク色だ。
さらにその先にはしなやかな太ももが……
「そんなに見せびらして、誘惑してるのか?」
ニヤつき女が声をかけてきた。
見返すと、笑ったまま私の下半身辺りに向けて顎をしゃくった。
視線を落とすと──大事なところをまるだしで胡坐をかいている自分に気付く。
あっ、なんてはしたないっ(汗)
女性の身体でこの姿勢は不味い。
慌てて膝を閉じて体育すわりの格好をした。
なるべく裸を隠そうと、私はぴったり膝を閉じてさらに背中を丸めた。
むにゅっと自分の胸が太ももに押しつぶされる感触がした。
なんというか、新感覚だ。
……こんなことに感心している場合ではないのだが……もうちょっと何かできるだろうか?
太ももを閉じたまま、両足首を外側に向けてゆっくり開いてみた。
思った以上に開いて……ペタンと太ももが地面に触れた。
「おお!これは……女の子座り!?」
"ぺたんこ座り"、"アヒル座り"とも呼ばれるかわいらしい座り方だ。
男にはなかなか出来ない姿勢なのだが、簡単にこなせてしまう。
ちょっと感動して何度も繰り返してしまった。
……だから、こんな場合ではないのだっ……!!
……ぺたんぺたんぺたん
夢中になっていると視線を感じた。
ニヤつき女が私をじっとりと見つめていた。
その瞳には邪な熱が籠っているようだった。
ふと脳裏に一つの可能性が浮かんで、心が急速に整理されていくのを感じた。
武器は何も持っていないと思ったが、あるんじゃないか??
♦
──さらに数時間後。
船は順調に進んでいるようだった。
ニヤつき女は階段梯子の傍に立って腕を組んでいる。
時折あくびをしている様子から、航海に問題ないことが伺えた。
「……ねぇ、ちょっとすいません。食事の時間はいつごろですか?」
女に声をかけてみた。
「昨日から何も食べていないのでお腹がペコペコなのだが……ちょっと聞こえてます?」
「──なんだぁ?」
何度か声かけをくり返して、ようやく彼女は反応した。
「お腹が空いた。そこにある果物が欲しい」
「お前ずいぶん呑気だな。自分の状況がわかっているのか??」
女は笑っている。
「こんな時だからこそ、しっかり食べておきたいのだ」
「捕虜のくせに偉そうだなぁ、おい!」
「捕虜ならば人格と名誉を尊重された扱いを受けなくては」
私は、学生時代に覚えたジュネーブ条約を思い出しながら言い返した。
……そもそもこの世界に国際条約はあるのだろうか?という疑問が浮かんだが、
それは追々調べよう。
「人格と名誉??」
女は鼻で笑った。
「お前にそんなものがあるか。これから娼婦になるお前にはな」
女の瞳には侮蔑の色が浮かんでいた。
「しかし空腹で本当に耐えられない。死んだら娼婦にもなれないのだが」
「簡単に死にやしないさ、我慢しな」
「そう言わずになんとかならないか? さっきからお腹が鳴ってもう限界だ。
見てくれ、急速に痩せていっている。明日には骨と皮になっているに違いない。
あっ!おっぱいがしぼみだしてる!?」
私のしつこさに、女は舌打ちすると近寄ってきた。
「馬鹿なことを言うな!?」
女がのぞき込むのを私は下からじっと見つめ返した。
きっと魅力的に見えるであろう上目遣いを意識して。
若干、女がたじろいだのを感じた。
…これはいけそうだ。
先ほど浮かんだ可能性が、私の中で形を成していく。
女を見つめたまま続けた。
「この身体で娼婦としてやっていけるだろうか?」
「…なぜあたしにそんなことを聞く?」
「取引がしたくて」
「取引???」
「…空腹を癒してくれたら、あなたを最初の客にする」
「……!?」
間髪を入れず思い切って口にしてみた。
「私を抱きたいと思っているのだろう?」
女の目が見開かれる。図星のようだった。
「私は空腹を満たし、あなたは欲望を満たす。お互い良い話だと思うが?
幸いここは二人きりだし」
「……お前、自分の状況がわかっているのか?」
女はまたそう言ったが、今度は明らかな動揺が見て取れた。
「わかっている」
私は目を逸らさなかった。
そうだ、私は丸腰ではなかった。
もう武器は持っている。
……この美貌だ。
確かな手ごたえを感じつつ、弱弱しく笑って見せた。
「悪い話じゃないでしょう?」
女は無言のまま怖い顔をした。
次に出てきた言葉は表情とは真逆のものだった。
「……どっちが先なんだ?食べるのと楽しむのと?」
女は誘いに乗ったのだ。
「食べる方が先だ。飢えたままでは楽しめない」
女は「それもそうだ」と呟くと、傍の木箱に手を伸ばし何かの果物を手にした。
「拘束は解かないぞ?」
「じゃあ食べさせて♪」
精一杯しなをつくって言ってみた。
女は野卑に笑って、私の胸に手を伸ばした。
がさついた指先が乱暴に乳首をつまみ、鎖骨を撫で、喉をつたい唇にたどり着いた。
(ハンドクリームを塗った方がいいんじゃないか……)
どうでもいいことが頭に浮かんだ。
その時だった。船が大きく揺れたのは。
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