盾と矛

ある町の商人曰く、


「この矛はあらゆるものを突き抜け、敵を刺し貫く」


「この盾は頑丈で、貫くことのできるものはない」


として、盾と矛を勧めた。


客人は、


「じゃあ、その盾をその矛で突いたらどうなるのか。それでは話が成り立たない。そういうのを”矛盾”というのだ」


と、高説を垂れた。


商人はため息をついて、客人に盾を持たせた。


「どうなるか見てみましょう」


商人が容赦なく、その矛で盾を突く。だが、盾には傷一つ付かなかった。


野次馬も関心していたが、同時に矛に関する話が成り立たないとした。やはり”矛盾”しているだろうと。


「ご安心を」


商人がそういうと、先の客人が倒れた。胸には穴が空いていた。


「ほら、盾は無事です。そして矛も、突くべきものを貫いた。これが、私の”盾と矛”です」

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