第74話 暗殺者、クラスメイトたちの試験を見届ける。
最初に四人が呼ばれてステージに並ぶ。
みんな各々の得意な武器を持ってAクラスの生徒と対峙した。
「では――――始め!」
号令に合わせて、Aクラスとの合同試験――――通称『見せしめ』が始まった。
「くっくっくっ。Dランクの雑魚諸君。せいぜい、必死に俺達に喰らいついてくれよ!」
「…………」
「ぎゃははは! 怖くて声も出せないんだな!」
たしかにこう見ると、向こうとこちらでの力の差は圧倒的なモノがあるな。それこそが才能。それだけ高い技術を持っていても才能で潰されてしまう世界。
俺が前世で暗殺技術を磨いたとて、今世で本物の暗殺者には手も足も出ない。それが才能であり、スキルというものだ。
だが、幸いにも俺には『カーディナル』という力があり、自分を強化することで前世で培った暗殺技術を発揮するのはそう難しくない。
クラスメイトの表情は――――意外にも、落ち着いた表情を浮かべていた。
「アダムさま~問題なさそうですね」
「ええ。みんな落ち着いている。これもイヴさまのおかげですね」
「ほえ? 私ですか?」
「ええ。彼らに目的になるものを与えましたから」
「うふふ。それを言うならアダムさまのおかげですわよ? だって、褒美は――――」
と、ステージ上で戦いが始まった。
Aクラス生徒たちは自信に溢れて、傲慢な笑みを浮かべて軽く攻撃をするが、どの攻撃もクラスメイトたちに効くはずもなく。
自分たちが描いていたシナリオ通りにいかないことを察知したからか、彼らの表情が強張り始める。
「おっと! Dクラスの生徒たちが善戦しております~!」
珍しく司会の人が声を上げる。
今までは淡々と始まりを知らせるだけだったが――――この『見せしめ』が一つのショーであることを示すかのようだ。
「俺様の攻撃が……効かない!?」
「Aクラスってこんなもんなのか?」
「はあ!?」
顔が真っ赤になったAクラス生徒は、無理矢理攻撃をねじ込んでくる。クラスメイトからすれば、自分よりも格上で速度も速い。だが、それに臆することなく、ギリギリで避けて木剣を彼の肩に叩きつけた。
「攻撃が直線的なんだよ! Aクラス様よ!」
当たった――――と思った瞬間、生徒の姿が消えていた。
これが才能の差。純粋な速度の差だ。
だが――――それはみんなが知っている。目的は何も勝つことだけじゃない。
だからこそ、相手の肩に傷跡ができていた。
「うおおおお! Dクラスの連中がAクラスに傷をつけたぞ!」
「すげええええええ~!」
「しかも四人とも全員一撃入れてるぞおおおお!」
「もしかして、今年のAクラスって大したことないのか?」
野次馬が飛び交う。
歓声と
一撃を与えたからといって、クラスメイトたちはけっして油断することなく、それからもAクラス生徒たちの攻撃を必死に、でもどこか余裕のある動きで避けながら攻撃を与える。
結果――――四人とも負けることになった。だが、たしかな手ごたえがあり、合同試験という意味では――――勝ちだ。
負けてきた四人とも、意外にも悔しそうな表情で、中には泣きそうになりながら「もう少しで勝てたのに……」と話す者もいた。
反対側からでも彼の気持ちを受け取ったのか、Aクラスの生徒は地面を叩いて、走り去っていった。
「で、では、続けて二組目の試験です!」
次の四人が始まる。
当然――――結果は変わらない。全員負けた。けれど、Aクラス生徒たちは圧勝できずに苦戦を強いられ、全員が腹を立てながらコロセウムを後にした。
これで少なくともクラスメイトたち八人は合格だろう。
さて、問題は次だ。
そのとき、一人の生徒が前に出て手を挙げる。
「シグムンド伯爵三男、アルバ・シグムンドです。一つ提案がございます。残り四人は一人ずつ試験でいかがでしょうか?」
「え、えっと――――はい。学園長の許可が下りました。まだ時間があるので、一人ずつで大丈夫です!」
「ありがとうございます」
こちらには選択権をいっさい与えず、その場でルールが変更された。
「アダム・ガブリエンデ……し、子爵!」
「?」
「俺は最後に出る。もし勇気があるのであれば、俺の相手になるがいい!」
「ああ。かまわない」
「……は?」
「?」
「ちっ! どこまでも……! 絶対に後悔させてやる!」
そう言いながら去っていく三男坊。
隣で一緒に聞いていたイヴが「アダムさまってこういう恨み買うのがお上手ですものね~」と俺を茶化した。
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