第22話 王弟ラドルフの焦りと嫉妬
前半はラドルフの回想、後半は公爵視点となっております。
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私は昔から、不平等を味わっていた。
優秀な兄がいるからなのか、誰にも期待されず、兄との扱いの差は一目瞭然だった。
幼い頃は、母に近づくたび、母は私を疎ましそうに見てきた。何もしていないのにだ。
兄はいつも私に憐れむような表情を向ける。
父は、無関心だ。
肉親だけでなく、王城の周りの人間も、私を雑に扱っていた。兄は有能な人間なのに、一方私は……ということだろう。
だが…しばらくして気がついたのは、王位が全てだということ。
『王位に近いから』
―それだけの理由で兄は優遇され、自分は軽く扱われる。その事実に耐えれなかった。
(私はそんな過小評価をうけていい人間じゃない!)
しかし、そう思いつつも、表面上はずっと大人しくしていた。そして、これからも……。
それが破られたのは、姪が生まれてからのことだ。
女で、王位を継げない。
―――可哀想な子だ。自分と同じで、王位から遠いからということで軽く扱われるのだろうな……。――と思った。
だが…現実は違った。
帝王学をすでにマスターした。
重要な会議で、聖女に代わって有能な案を出した。
長年国交のなかった国との国交を回復させた。
などなど……。
さまざまな人が、姪を褒め称える。
さらに、次の王位は王女のものだと。
『ふざけるなっ!!私が、どれほど、どれほど、欲しているかも知らぬ立場を、なんの苦労もなく、奪うのか!?』
生まれながら恵まれて、のうのうと生きてきた奴らが、ただただ憎い。
私を過小評価した人間が憎い。
私の手を振り払った母も憎い。
すべてが憎い。
だから、まずは、生まれつき恵まれた奴らから、すべてを奪う。
――そうでないと、不平等だろ?
――――――――――――――――
レティシアの侍女が公爵を、先ほどまでアンジェラとお茶をしていた中庭に連れてきた。
「こんな夜更けになんの御用かしら?公爵。」
「もう朝にございます。皇后陛下。――それより、本題に入らせていただきます。」
「せっかちなストーカー男ね。せっかちな男はモテないわよ?」
「……いい加減に、ストーカーと呼ぶのをやめていだけませんか?」
「だって……ほんと、昔からわたくしの娘のストーカーなんですもの。」
皇后レティシアはころころと笑う、だが…その目は笑っていない。何を考えているのかわからない目だ。………もっとも、今はわかるが…。
「……アンジェラは、無事なのでしょうか?」
皇后レティシアの目が、スーッと細くなる。
「どういうつもりかしら?何があっても、絶対に安全に守る、危険には晒さない――そう言ったわよね?」
「申し訳ございません…。万全の準備と警戒はしておりました。それに、村人に扮した大勢の護衛もつけておりました。」
「ならば!!!なぜ、このような事になった!!『黒い鏡』が動かなければならない事態に!!
それに、肝心のソナタはどこにいた!?」
レティシアの怒りが沸点に達したのか、手元の扇子がレティシアによって歪んでいく。口調も、王城でのものへと変わっていく。
「……神殿におりました。」
「…………そなたが、守ると言うからあの子を任せた。だが、そなたには無理だったようだ。………………故に返してもらうぞ。………出ていけ。」
(………ここで引き下がるわけにはいかない。)
「………それは………無理です。」
ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「……出ていけと言っておるだろう。なぜ従わない。」
自分には、昔、彼女が泣いていた光景をはっきりと覚えている。それに……。
「……お断りします。」
レティシアの扇子は、音を立てて、真っ二つに折れた。
完全に、皇后を怒らせたことには間違いない。
だが…一歩も、譲るつもりはない。
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