第13話 不穏な数字と予感
本業が立て込んでおり、久々の投稿となりました。
皆様にはご迷惑おかけします。
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「で、女装までしたと?」
補佐官であるトマスが腹を抱えて笑う。
「………何もそこまで笑わなくてもよいだろう。」
トマスはこれ以上ないくらいに笑い転げていた。
「いえいえ、若様が、女装して、奥さまの前で……ふっ、ははは…おもしろいですなぁ。」
ここは、王都にある、とある人物の屋敷の中である。
その執務室に二人はいた。
「仕方なくだ。一応、彼女が王女だという事は露見してはならないんだから………。
トマス、これ以上笑うと、その薄い頭が余計ハゲるぞ。」
「ゴホンっ………わたくしの頭はともかく、なぜ瞬時に女装してごまかしができたんですか?」
「…影にアンをつけさせていたんだ。まあ、…後から僕も行ったんだが。女装をしたのは…その………男の姿だと、おそらく僕自身の正体に気づかれてしまう恐れがあるからだ。」
実は偶然を装ってともにいたティオナは影のうちの一人である。
そして、主人にノリノリで女装をさせたのも彼女である。
「若様………好きな女性をストーカーするのはモテませんぞ…。」
「………別にストーカーではない。」
「はあ…、全く、こじれた男が好きな女性を隠れて追いかけ回しているなんて…。若様、奥さまはご存知ないんでしょう?若様が………。」
「まだ、彼女は、知らなくていい。僕は、彼女に本当の僕自身のことをまずは知ってもらいたいんだ。」
「さようで。」
ニマニマしているトマスはさておき、やらなくてはならない事は相変わらず山のようにある。
「だから、邪魔者は早めに片付けなくてはな?………それで、王弟ラドルフの動きは?」
「表立ってはまだありませんが、水面下で動いてるかもしれないと………。」
渡された資料を見ると、僅かずつだが、王弟ラドルフとその手下が治める西部以外の、鉱物と小麦の流通量がここ数ヶ月で減っている。
鉱物と小麦の総生産量はほとんど変化していないのにだ。
(絶妙な量の減り方………。)
ギリギリ誤差とも言えなくない量だが、誤差にしては少し大きい減り具合………。それがここずっとだ。
さらにもう1つの資料をみる。
「それに、ルード商会………。」
ルード商会は、商会の稼ぎどころである鉱物のやり取りと小麦のやり取りがうまくいかず、低迷しているという。
(………商会の一人娘レティーの結婚………あれは、商会経営が少し苦しくなっていたからか?)
何かが引っかかる。
これは、大きく張り巡らされた計画の一部に過ぎない………そんな予感がした。
小麦、鉱物流通量の減少。
商会の経営低迷。
王位継承順位。
「トマス、これはまずいぞ。」
「………………やはり…。」
「早急にあの方に報告と対策会議を。」
「………承知いたしました。伝令を王城に飛ばしましょう…アルウィン様。」
(これは、アンジェラも巻き込まれかねない。)
それだけは、絶対に阻止しなくてはならない。
そう、昔誓ったのだから。
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