第8話 仕事の依頼と…
すみません、誤字がありましたので、訂正しました。誤字報告ありがとうございます。
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鶏肉売りの少年ジムが、朝早く家にやってきた。
「ジムでーす!アルさんいますかー?」
「あら、……アルなら、もうお仕事に出かけたわよ?」
見るからにしょんぼりするジム。
「何か渡すものなら、私が預かるわ。」
「………おねえさん、もしかして、アルさんの奥さん?!!」
「あ、…まぁ、そうなるわね……。」
『奥さん』という響きに慣れず、何故かむず痒いアンジェラ…。
「すげー!噂通りの美人だ〜。…って、そうじゃなくて、もともと、これはアルの奥さん宛てなんだ。」
1枚の手紙が渡される。
『ハサウェード子爵に来月嫁ぐルード商会の令嬢レティーのマナー指導教師にモトム。』
と手紙には書かれていた。
「レティー様のマナー指導教師に、アルの奥さんが選ばれたってさー!子爵様付きの執事からの手紙だよー!」
レティーとは、前にアンジェラに洗濯水をぶっかけてきた少女である。
(え、あの子……!?てかあの子、まだ14とか15歳とかぐらいでしょう?!もう、あの年で結婚しますの!?)
「レティー様は、まだ16歳なんですよ。なのに、20も年上の子爵様に嫁がされる予定で…………。けど、あの通り、レティー様はマナーも教養も、とても子爵夫人となるには…。」
「足りないということね…。ちなみに、嫁がれるのはいつなのかしら?」
「来月……。」
(ら、来月………つまり、ひと月で、マナーも教養もつみこめと…。)
「………わ、わかりましたわ。ですけど、なぜ、私が選ばれたのか、ご存知??」
「………あ〜〜、なんかレストランでの作法が〜どうのこうの〜って聞いたなー。」
(レストランでの作法かしら……??)
「………マナーも教養もだなんて………両方する自信はありませんわ。」
(むしろ、花嫁になるための教養だなんて、私のほうが知りたいですわ!)
「あ、教養は別の人が担当されるそうです!なので、あなたにはマナー作法をお願いしたいそうです!」
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「………だそうですの。この件をお受けしてもいいですの?」
夕方、やっと帰ってきたアルに手紙を見せた。
「え?別に、してはいけないとか強要した覚えがないはず………。」
「………だって、家事がおろそかになる可能性があるかもしれませんのよ?」
「それは、僕がやるから気にしないでください!明日からちょうど、王城の仕事が、楽になるので!」
「ホントかしら?無理なさらないでくださいませ。昔、似たようなことを言って、母が倒れましたの。過労だったのですわ。」
「ああ、今は西の別荘で療養中の王妃様のことですか。」
「詳しいのですね、そうなのです。」
アンジェラの母は昔、公務に勤しみ過ぎたせいで体を壊したことがある。
それから、無理をしないようにと、ずっと別荘で療養しているのだった。
「………僕の過労より、王女様が口説かれることのほうが心配ですよ。」
「私を口説くような物好きはいませんわ。」
「……………いや、これ…無自覚で言ってる??わざと……??」
アルがぼそっとつぶやく。
「アル? 聞こえませんわ?なんて言いましたの?」
「いや、何でもないですよ。」
アンジェラは、そのきれいな顔をこてんと傾けた。
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「では、案内しますね。アン様。」
アンジェラは平民になってから、アンと名乗ることにしたのだ。そして、今日は、レティーの実家の商会からの遣いが来ていた。
「はい。お願いします。」
毎朝の洗濯で女将さんや他のおばさま方に習って、見知らぬ人への言葉遣いが改善されつつあるアンジェラ。
「行ってきます。」
アルが入口付近で心配そうにしていたので、手をふる。
アンジェラは、商会からの遣いの侍女とともに
馬車に乗り込んだ。
ガラガラと音をたてて走り去る馬車。
『見つからぬように、護衛しろ。』
ぼそっとした声が、地に落ちた。
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