王宮にて(前)

無事に王都へと到着致しました。


通常、1~2日で着く所、5日間かけて帰って来ました。



「…懐かしい。」


久々の王都はなんとも感慨深い気持ちです。


馬車の列は実家の伯爵家では無く、真っ直ぐ王宮へと向かいます。



不遇の扱いを受け、急に馬車の旅を強要された見窄らしい私をすぐに王宮に呼びつけるなんて酷い…と、思いましたか?




いやいやそれが私、超元気な上にピッカピカなのです。(ドヤ)



 

そもそも帰って来るのに何でこんなに日にちが掛かったのかと言いますと、私の精神面や健康面をやたら気にされ、1~2時間毎に休憩が入り、早めに近くの町で宿泊していたのです。


馬車が思った以上に辛かったので助かりました。



さらに、あの大掛かりな馬車には私のドレスやらアクセサリーやら簡易的なお茶のセットやらエステセットやらと、見た目以上に収納されておりました。(ドレスは私の健康的な食生活によるサイズダウンですぐには着る事はできませんでした)


町での宿泊時、出来る侍女さん達により至福のマッサージを受け、美味しい物を食べ、途中の町を大変満喫致しました。


もちろん、こんな状況なので浮かれた様子は表に出しておりません。


持って来たドレスのサイズ直し等していたら少し時間が掛かってしまったようです。


え?第二王子?


まぁ、普通に一緒に過ごしましたが特に何もなかったです。



…そんなこんなで、私は気力体力ともにとても元気なのです。







馬車御一行は王宮の門をくぐり離宮へと進みました。


ここにはお母様が御帰郷の際に利用できるように専用の宮が用意されています。


私も子供の頃からよく泊まらせて頂きました。


いつもの場所かと思いきや、あまり使った事のない広い応接室へと通されました。



扉を(侍従が)開けて入るとそこには懐かしい人々が勢ぞろいしております。





お父様、お母様、王太子殿下、第三王子殿下(王子様は3人です)、小伯父様、小伯父様の子供(2人)、その他諸々(側近の方々もチラホラいました)お母様方の親族勢ぞろいです。(国王陛下、王妃殿下除く)


伯父様(国王陛下)達はお仕事中でした。



前世の記憶が戻ってからは初めての再会です。




到着した元気いっぱい(表には出していません)な私とは対照的に王宮の離宮にて出迎えて頂いた皆様ご一同…なにやら、重々しく沈痛な面持ちでいらっしゃいます。




そうでした…。


私、婚家で不遇の扱い受けての絶賛実家出戻り中ですもんね…。






私を見た、お父様とお母様が駆け寄ってきます。


後ろから続いて皆様も向かってきます。



ぎゅっ



「…っ。」






…優しく抱きしめられ、気付いたらわたしの瞳からは涙が溢れていました。



お母様も涙を流しています。



今、私の瞳から流れているのは、今世の18歳だった私の涙です。


前世の私は強く図太いですが、今世の私はまだ18歳です。


16歳の時に初めて恋をして、すぐに結婚までしてしまった。


なのに、恋した相手には裏切られ、使用人には嫌がらせをされ、味方のいない慣れない場所でずっと頑張ってきました。


助けて欲しいと言いたくても言えなくて…



…辛すぎる。



前世を思い出してからはそんな事ありませんでしたがこの2年間、とても頑張っていた事を考えると胸が痛みます。


 


おばちゃんでも泣けます。









…さて、感動の再会(ひと通り泣いて小伯父様達ともそれぞれハグしました)後、それぞれの現状やら今後やらの話し合いとなります。


私を気遣って明日に持ち越す事も提案されましたが、早く終わらせたいのでこのまま進める事を希望しました。(心身共に元気なので)



王宮の侍女の方に淹れて頂いた紅茶を飲みつつ、聞いてビックリ。


なんと、侯爵家当主夫妻、侯爵家嫡男様、運命のお相手様、領地にいた使用人方々、その他の人々(?)、皆様既に王都へと到着しておりました。


そして、既に(多少乱暴な)事情聴取済み。



そして…皆さんの事情を聞いたところ、なんとまぁ、お粗末な事でした。







…結局、簡単に言えば侯爵家嫡男が責任も忘れて恋に浮かれたお馬鹿さんだったのです。


そもそも平民は侯爵家の当主夫人にはなれないのに。




相手のお嬢さんは貴族についての勉強不足。



そしてそんなお馬鹿さんにまんまと引っかかってしまった私はおマヌケさん。(これぞ黒歴史)



侯爵家当主様は隠れ当主不適合者。


そしてお父様はちょっと慢心していたのね。(あと、愛が重い)

  


なるほど。




侯爵家領地の使用人達は大きく二種類に分かれているらしいです。


そもそもだれが嫡男の妻か知らなかった者


妻の存在を知っていて行動した者



知らなかった場合は可哀想な気もしますが、侯爵家の使用人ともなると知らなかったでは済まされないです。


それに、たとえ集団心理的な物で軽い気持ちだったとしても、された方には堪ったものではありません。


そしてこの身分制度の国において、今回の事は許される行動ではありません。



…侯爵家の中において罪を考慮されるべき方は存在しませんでした。







…結果、侯爵家は既に無くなっておりました。(注:過去形で間違っておりません)









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