関係性のアップデート

『それでは、これにてハイスクールIT大賞の授賞式は終了とさせていただきます。皆様、最後までありがとうございました』


 あれから、もう一度舞台に立って2人で賞状を貰い控室に帰った俺とナナは、部屋越しに授賞式が終わるアナウンスを聞くこととなった。


 時刻は午後2時。


 昼食に関しては賞状を貰う前の昼休みに支給された弁当ですでに済ませている。


 しかし、それ以降の予定はまだ決めていない。

 

 関係性のアップデートを行うなら、そこが狙い目であろう。




「……ケイスケ、この後はどうする?」


 ホテルへの帰り道、ナナが俺の手を無意識のうちにつないでくる。


 俺はヘイアンに『どこで恋人になるための告白をすればいい』と聞ききたくなるが、残念ながら今は出来ない。


 今ここでその質問すれば、告白しようとするのがバレるのは目に見えている。


 それに、今回ばかりはそういったことも自分で決めたかった。


 ここからは、俺だけの戦いだ。


 俺は自分の頭だけで考え尽くした末、告白する場所を決めた。






「ナナ……いつも俺の側にいてくれて、本当にありがとう。俺は、これからもキミと一緒に歩んで生きていきたい。付き合おう」


 ホテルの寝室にて、俺はナナに想いを告げた。


 考えに考えた末、俺は公共の場ではない2人で落ち着ける場所が最適だと考え、ホテルの寝室で告白することにした。


 そもそも、ナナが引っ込み思案で人見知りの傾向があることや、俺がバリバリのインドア派であることを考えれば、この結論は必然だったであろう。


 告白を聞いたナナは緩やかに顔を赤らめつつ、笑顔を浮かべていく。


 そして、


「……うん。こちらこそ、よろしく」

 バギュッ


 返事をしながら、俺に抱きついてくれた。


「ケイスケ……ずっと一緒にいようね」


「ナナ……ありがとう。俺も、ずっと離さない」


 俺はナナを抱き返し、耳元でささやいた。


 なお、10秒くらい経ってからお互い恥ずかしくなり、俺たちはハグをやめてからはしばらく固まっていたのであった。




「にしても……ボクたち付き合ったんだね。あんまり実感ないや」

 

「まあ、今まで高頻度でボディタッチに類することはやって来たからな」


「あっ、でもまだやったことないボディタッチ……あったね」


 そう言いつつ、ナナが俺に顔を向ける。


 その動作だけで、ナナが何をやろうとしているのか察し、俺もナナの方に顔を向ける。


「おいで……ナナ」


 俺たちの唇と唇が接触する、もっとも耽美たんびなボディタッチ。


 いまはただ、愛する人の感触が愛おしかった。



 この日、俺たちの関係性は幼馴染系友人から恋人へとアップデートされることになったのであった。

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