いよいよ授賞式へ
「パン1個、スープ1杯……それだけでもけっこう物足りるな」
12月23日の朝8時、俺達はホテルにあるバイキング形式のレストランを利用して朝食を食べていた。
どうやら、宿泊客だった場合は朝食のバイキングが無料になるらしく、俺はコスパを気にすることなく質素な食事を楽しむことができた。
「そっちのコーンスープも、おいしそうだね……ボクのオニオンスープを少しだけあげるから、ちょっとだけ欲しいな」
「いいぞ。俺もちょっと気になっていたし」
俺は残りわずかになったコーンスープをナナのオニオンスープと交換する。
よく考えたら、これは間接キスなのではと思いつつ、俺はオニオンスープを飲み干した。
ナナの顔が赤っぽくなっていたあたり、向こうもやってから気付いたのだろう。
「……よし、ごちそうさま」
「俺も、ごちそうさま」
俺達はほぼ同時に朝食を終え、再び部屋へと戻っていった。
「さてと、お互い制服に着替えたことだし、そろそろ出発しておこう」
午前9時すぎ、俺達はついに授賞式会場に行くための準備を終えた。
『ケイスケさん、ナナさん……いよいよですね。私たちの晴れ舞台』
「……ちょっと緊張するけど、それ以上に楽しみ。どんな煌びやかな出来事が、待っているのかな」
『みんなの力を合わせて、頑張りましょー!』
テロンッ!テロン!
みんなで志気を上げていく中、突如俺とナナのRINEの通知音が鳴る。
『2人とも、頑張ってねぇ』
『部長、喜多村先輩、応援しています!』
『なんかよくわからないけど、ベストを尽くしてね!』
音がなった理由は、元希望部の人たちが集まるグループに俺達を応援するメッセージが書かれたことによるものであった。
テロンッ!
「息子よ、授賞式を頑張るのです」
「ケイスケ、その手でつかんだ栄光を、握りしめて噛みしめてこい」
続いて、俺のRINEは父さんと母さんからの応援メッセージを受信した。
テロン!
「あっ……父さんからだ……珍し。なになに……『己のセンスに身をゆだね、栄光を五感で感じろ』」
最後に、ナナのRINEに海外で活動しているナナの父から応援メッセージが届いた。
「みんなが……ボクたちを応援してくれていたんだね」
「ああ……そうだな」
俺達は、多くの人々によって支えられている。
そのことを強く感じ、胸が熱くなった。
ガチャッ!
俺達は部屋を後にし、部屋のカギが自動で閉まる。
『授賞式会場であるチクバ会館は、ここから徒歩で約10分。途中の信号待ち時間を考えても、十二分に予定時刻までには着きます。検討を、お祈りします!』
数か月前には考えもしなかった晴れ舞台へと、俺達は向かい始めた。
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