引っ込み思案と誇らしさ

「実はね……ボク、めっちゃ緊張してるんだ……」


 22日の午後10時、隣のベッドで包まっているナナが少し小声でベッドに横たわる俺に語り掛けてくる。


「そうだよな……海外の専門家まで来るような式だ。緊張しないわけがない。それに、ナナは……」




 ナナは、人見知りであった。


 俺相手にはかなりグイグイ接しているから、時々俺も忘れそうになるのだが、ナナは初対面の相手にはとことん弱い。


 AIであるヘイアンとですら、初会話のときは少し遠慮がちだったような気がする。


 だから、授賞式に参加することに対してナナは反対するかもしれないと、招待状を受け取った時に少し思ったのだ。


「……確かに、授賞式の招待状を受け取った時はさ、『恥ずかしいな』っていう気持ちも一瞬あったよ……でもね」


「……ケイスケとなら、恥ずかしさを超えて誇らしく思える気がしたんだ」


 『恥ずかしさを超えれば誇らしさになる』という言葉の実感は湧かずとも、彼女が伝えたいことはなんとなく理解できた。


「……ありがとう、ナナ。こんな時、どんな感じで感謝を伝えればいいんだろうか……って!?」


 突然、ナナが俺を布団越しに抱きしめる。


「……あっ、ごめん。愛おしさがあふれて」


「いや、このままでいいよ……ナナ、ずっと俺と一緒にいてくれて、ありがとう」


「うん。ボクの方こそ、ずっとボクの側にいてくれて、ありがと……スゥー……スゥ……」


 ナナが俺を抱きしめたまま、眠りにつく。


「寝ちゃったか……おやすみ、ナナ」


 俺はさっきの雰囲気は告白向きだったなと少し惜しみながらも、ナナの睡眠を邪魔しないように布団を出て睡眠導入剤を飲んで布団に戻った。


 幸せに溺れていくように、いい眠りだった。






「……おはよ、ケイスケ」


 翌朝、俺は起きて早々にナナの顔を視界におさめた。


『ただいまの自国は7時30分、授賞式は10時集合で、式の会場までは徒歩で10分。朝食をとる余裕は十分にあります』


 ナナのスマホ越しに、ヘイアンが状況を伝達し、朝食を勧めてくる。


『旅行に来たのに2食連続コンビニ飯はちょっとアレなので、ホテル内の飲食店の利用をオススメいたします!』


 続いてタイラが、コンビニ以外の手段で朝食を食べるよう勧める。


「そうだな……資金は普段の小遣いよりいっぱいあるし、下の階にある店で食べるのもありだな。ナナはどうしたい?」


「それで全然オッケイ……大賛成」



「じゃあ、さっそく降りるか」


「そういえば……下の飲食店はバイキングらしいから、量もある程度調整可能なんだって」


「小食な俺にピッタリじゃん」


 ギイイ……ガチャン。


 俺とナナは部屋を出て、唯一の加工手段であるエレベーターへと向かっていった。

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