特別なキブン
20時過ぎ、俺たちはついにこチクバ特別区の駅に着いた。
『ここから駅を出て徒歩1分でホテルに着きます』
「あっ、もう着いた」
ヘイアンの案内に従う間もなく、俺たちの目の前には今夜宿泊するホテルがそびえ立っていた。
「まさか……コンビニ見つける前にホテルに着いちゃうとはね……」
『このホテルの裏側に、コンビニはあります!』
「……さんきゅ、タイラ」
俺たちはタイラの指示に従い、コンビニで夕飯を買った後、ホテルにチェックインして部屋に入った。
「いただきます」
「……いただきます」
2人が顔を見合わせて食べるくらいの広さしかない机の上にコンビニで買ったパンやおにぎりを置き、俺たちは夕食を始めた。
「あんがい……こういう雑な特別感も、いいよね」
コンビニで買ってきたものを家で三食代わりに食べること自体は、何一つとして特別なことではない。
しかし、旅行先のホテルでそれをすることで雑ながら、特別感が生まれてくることも確かであった。
「……おいしいね。一緒に食べるの」
「そうだな」
俺たちは、普段なら買わないような300円くらいするおにぎりや200円くらいするスイーツを一緒に食べ、空腹を満たしていった。
「んじゃ、次はシャワーでも浴びるか」
俺たちが止まった部屋のトイレはユニットバスになっており、シャワーも風呂もその気になれば入ることができるようになっていた。
明日は公共の場に出る以上、身体を清潔な状態にするのは当然の道理であった。
「……どっちが先、入る?」
「俺はどっちでもいいかな。ナナはどう?」
「ボクも特にそういう希望はないかな……2人で同時に入るのも、ユニットバスではあまりにも狭すぎるし」
「んじゃヘイアン、1D2で乱数を振ってくれ。1が出たら俺が先、2が出たらナナが先ということで」
ナナがさりげなく混浴しようとしていたことはさておき、俺は判断をヘイアンに委ねた。
『かしこまりました。2が出たのでナナさんが先に入ってください』
「わかった……じゃ、行ってきます」
こうして、ナナはユニットバスへと入っていった。
「ケイスケ……出たよ」
10分後、バスタオルにくるまれた状態のナナが湯気を出しながらユニットバスから出てきた。
「んじゃ、入る」
「……りょーかい。ボクは今のうちに着替えとくね」
多少の恥ずかしさを感じながらも、俺は平然なフリをしてメガネを外し、ユニットバスへと入った。
おそらく、1か月前のお泊り会でナナの裸を見てしまったことで、その辺の感覚がマヒしているのだろうか。
少し難しいことを考えつつ、俺は全身を洗い終えた。
俺の分のバスタオルはシャワーの影響で濡れて使えなさそうではあったが、俺はすでに着替えをユニットバスの中に持ってきている。
「さてと……これでよし」
俺はきちんと着替えた状態で、ユニットバスを後にした。
「メガネをしていないキミも……お風呂上がりのキミも……やっぱり男前なんだね」
風呂上りの俺は、ナナ的には好印象だったようだ。
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