いざ、チクバ特別区へ

「……いよいよ、授賞式だね。タイラちゃん、どうやってチクバまで行くんだっけ」


『国鉄タカセ区駅で国鉄に乗り、首都駅にて国鉄北線に乗り換え、チクバ特別区駅で降りたら到着です!』


 俺の隣で、ナナとタイラがスマホ越しに会話する。


 12月22日の午後6時、俺たちはチクバ特別区に行くべく国鉄に乗っていた。


 


『首都駅~首都駅です。お乗り換えの方は、降りてください』 


 19時ごろ、俺たちは首都駅へと着いた。


 帰宅ラッシュによって生まれたケタ違いの人込みが、俺たちを迎え入れる。


「ナナ、はぐれないように手をつなごう」


「うん……さすがにこれは繋がないとね」


 とっさに、俺は迷子になってはぐれるリスクを察知し、ナナと手をつなぐことを提案、無事に受け入れてもらった。


『国鉄北線の乗り場は地下3階にあります。ひとまず、今いるであろう地下2階から階段を見つけて降りましょう』


 右耳にのみ付けているイヤホンから、ヘイアンの指示が飛んでくる。


「ナナ、下へ行く階段あったぞ」


「あっ、ホントだ」


『階段に着きましたら、駅の天井部分にある案内看板に従って北線乗り場まで向かいましょう。』


 AIたちの助けを借りつつ、俺たちは都会の荒波をかきわけていく。


 手をつなぐという恥ずかしさが吹き飛ぶほど、俺たちは乗り換えに躍起になった。


「あっ……ちょうどよく電車が駅に来ている」


 やがて、俺たちは国鉄北線の乗り場に辿りついた。


「よし……!なんとか座席に座れた」


『ちなみにここから1時間ほど乗ることで目的地に着くと思われます』


「やっぱ急行でも長いな……」


 チクバ特別区はタカセ区が属する県や首都よりも北にある県の中に存在する。


 タカセ区のある県とは距離感の都合上、2か所をつなぐ飛行機の便も夜行バスの便もなく、公共交通機関を用いた移動方法は電車一択となっている。


「今日は終業式とかもあってもう疲れたし、夕食は着いた先にあるコンビニで食事買ってからホテルで食べるってのはどうかな?」


「賛成……ボクもそれでもういいかな」


 俺たちの高校は、今日が2学期最後の日であった。


 なお、終業式といえば表彰式があるが、俺たちはまだ賞状を貰っていないので、今回は表彰されることはなかった。


 ただ、3学期の始業式にすることがすでに決まっており、俺たちの受賞を知った元部員たちからRINE上で祝福を貰っている。


 彼ら元部員のためにも、なにか俺にできることがあればいいのだが。


「それはそうと……楽しみだね、相部屋」


「……そうだな」


 俺たちはチクバ特別区にあるホテルにて2泊分の予約をすでにしている。


 そして、ナナの希望で2人向けの部屋で一緒に泊まることになっているのだ。

 

 今の俺たちは、まだ名目上では付き合っているわけではない。


 お互いの好意自体はきちんと認識して、それっぽいことはしているものの、まだ告白すらしていない。


 いわゆる、事実上の交際関係である。




 だからこそ、この旅行でやってみせる。


 想い人への、告白を。

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