授賞式への招待

 ハイスクールIT大賞の結果発表が行われてから約1週間後の月曜日、俺の家のポストに授賞式への招待状が届いた。


「ケイスケ、こんな凄そうなコンテストに応募していたのですね」


「しかも受賞しているとはな。やるじゃないか」


 学校から家に帰ると、机の上に招待状がある状態で両親が受賞したことに関して触れる。


「……ありがとう。これからも頑張る」


 俺は久しぶりに父親に褒められたこともあり、少し照れくさくなりながらも月並みな返事をした。




「ボクの家のポストにも、その手紙来ていたよ」


 夕飯後にサンドボックスゲーム『アワーズクラフト』でナナと通話中、俺たちは授賞式の話題へと突入していた。


「にしても……受賞式会場であるチクバ特別区までの往復交通費全額支給な上に、2泊分のホテル代まで用意してくれるなんて……すっごいよね」


 チクバ特別区は、タカセ区よりも北にある県内に位置する実験に特化した国指定の区域である。


 区域内には、国立研究所や各種大学が存在しており、俺たちが入学する権利を獲得したチクバ工業大学もこの中にある。


「そういえば、授賞式に出る場合には制作物に関するスピーチと受賞したこと対するスピーチを行う必要があるんだけど……どうしよう」


「制作物に関するスピーチはさ、ヘイアンちゃんにやらせようよ。ボクたちが話すよりも、そっちのほうがヘイアンちゃんの凄さが伝わるだろうし」


「それもそうだな」


「じゃあ、もうひとつのスピーチは」


「俺がやってもいいか?」


 俺にはいま、スピーチを通じて人々に伝えたいことがある。


 これは、俺だからこそ伝えられることだ。


「……うん、いいよ」

 

 ナナは俺の意見を優しく肯定してくれた。




 それから俺たちは、ゲームの中で最近のアップデートで追加された『試練之施設トライアル・センター』というダンジョンに挑んだ。


「うわっ!めっちゃミイラいる!なんか鋼の剣も持ってる!」


「近距離系は任せて……ケイスケはそっちのリリパットを頼んだ」


 施設内には大量の敵がおり、プレイスキルに少し難がある俺だけでは攻略が難しくなっていた。


「よし……これで全部。制圧、完了」


 でも、ナナと一緒に挑むことで敵の種類ごとに役割分担して倒すことができ、なんとか制圧することができた。


「ナナ……ありがとう」


「どういたしまして。これからも……一緒に頑張ろうね」


「……ああ、そうだな!」




 俺は少しづつだけど、前に進んでいる。


 ナナやヘイアン、タイラの力も借りつつ、未来に向かって進んでいる。

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