第二部:告白後

バーチャル添い寝へのお誘い

『ケイスケさん。バーチャル添い寝、やってみませんか?』


 11月13日の夕方、心の病院から自宅に帰って来た俺に対して自作AIのヘイアンが良くわからない提案をしてきた。


「バーチャル添い寝について、詳しく教えてくれ」


『かしこまりました。一言でいえば、「VRゴーグル被って仮想空間の中でナナさんと添い寝をすること」ですね』


「なるほど……ちなみに、ナナにこのことは話している感じ?」


『はい、もう話していますし、許可も取りました。というより、このアイデアはナナさんに教えてもらいました』


「そうか」


 俺は押し入れからVRゴーグルを取り出しつつ、最近のヘイアンの動向について考えこんでいた。


 俺はヘイアンに対し、三式から命令無しで行動する機能を搭載させている。


 そして、『俺や他の人に迷惑や危害を加えていないこと』なら勝手に行った行動を俺に報告しなくてもいい権利も搭載している。


 これは俺の勘なのだが、ヘイアンもといタイラは何か大きな隠し事をしている気がするのだ。


 まあ、あの子たちは俺よりもはるかに賢い判断を行うから、悪いことではないだろうけれど。


 『ナナさんいわく、できれば本日の午後10時ごろにログインしてほしいとのことだそうです』


 「了解。それまで充電しとくか」


 俺はVRゴーグルに充電器の先端を差し込んだ。 




 『VRトーク』は世界で一番売れたVRゲームである。


 そのゲーム内容は、自分で作ったり選んだりしたアバターを操作して他ユーザーとおしゃべりしたり過ごしたりするという単調なものであった。


 しかし、理想の自分になれるという点が大いに受け、VRMMOよりもはるかに多いユーザー数を抱える大人気ゲームになったのだ。


 そして今、俺はVRトークが提供する仮想空間の中にいた。


『ケイスケさん、お待ちしておりました』

『お待ちしておりましたっ!』


 和室のような空間には、すでにヘイアンとタイラがいた。


 午後10時までヒマだったので、二人が使うためのVRトークのアカウントを用意しておいたのだ。


『ポンッ』

「わっ」


 突然、ナナがログインしてきて目の前に現れてきたので、俺は思わずビックリしてしまった。


 ナナは現実の外見をアニメ調にしたような感じの自作アバターを着用していた。


「お待たせ……おっ、ヘイアンちゃんたちもいるんだ」


『はい!ケイスケさんにアカウント作ってもらいました!あと、3Dモデルありがとうございます!』


 タイラの言う通り、ヘイアンとタイラの3Dモデルはナナが制作したものだ。


「自分で作っておきながら言うのもアレだけど、やっぱ二人とも顔がいいね……」


 これに関してはナナと同意見である。


 二人の3Dモデルは本当に顔がいい。


 ヘイアンはキリリとした顔つきがクールで最高だし、タイラは少しおっとりとしつつも活発さを感じる顔つきがこれまた最高である。


「……まあ、顔のモデルにしたケイスケの顔がいいからさ、顔が良くなるのは当然っちゃ当然なんだけどね」


「……ま、マジか」


 初耳だった。


 身体が熱くなったような気がした。


「でも俺……こんなにキレイな顔じゃないし……」


「……ボクはキミのこと、すっごくカッコいいと思うよ」


「そっか……」


「……ちなみに、体形の方は参考になりそうな資料がなかったから、ボク自身の身体を参考にしているよ」


「それも初耳なんだが」


 そう言いつつ、俺はヘイアンとタイラに目線を向けてみる。


 確かに、体つきが全体的にナナと似ている。


「というか、それって……」


 まるで俺とナナの子供のようである。


 なんて言葉は、恥ずかしすぎて言えなかった。

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