食後の告白と号泣
「ううっ……ナナぁ……ぐすっ、ぐすっ」
午後7時、ナナと共に夕食を食べ終えた俺は、情けないことに泣いてしまった。
その日の夕食も美味しかった。
家族の厳しい視線を気にせず食べる食事は、とても良いものであった。
対面で嬉しそうに俺を見ているナナを見ると、なんだか心が温かくなってしまった。
そして、やらかしてしまった。
きっと感極まってしまったのだろう。
ご飯を食べ終えたとき、俺の口から出てきたのは告白の言葉ではなく、嗚咽であった。
俺は、泣いてしまった。
「ケ、ケイスケ……大丈夫?」
「うう、ごめん……ぐすっ、ぐすっ」
おそらく心がもう限界を迎えつつあるのだろう。
いくら涙をとめようとしても、その液体は俺の意思を無視してひたすらに流れ続けた。
このままじゃ告白できない。
「……大丈夫だから、ボクはキミの味方だから」
泣き止まない俺の背中をナナがさする。
すると、自分がますます情けなくなり、涙がより一層出てしまう。
「ナナ……ごめん。うう、こんなにいっぱい迷惑かけちゃって」
「だいじょうぶ、こんなの迷惑なんかじゃないよ。だからさ、いっぱい泣いていいよ」
そう言いつつ、ナナがさりげなく俺の頭をやさしくなでる。
「ううっ……うう」
俺はしばらく、その優しさにその身をゆだねていた。
「……ナナ。俺、ナナのことが好きなんだ」
俺の眼から涙が出てこなくなってだいぶ息も落ち着いてきたころ、俺は半ばヤケクソで告白した。
おそらく、いまの号泣でナナの俺への扱いは手のかかる弟になってしまったかもしれない。
……それでも、好意がそこに有ることを、伝えたかったのだ。
「ずっと今まで、こんな情けない俺と一緒にいてくれるほど優しくて、暖かいキミが好きだ……命を諦めたことを後悔するほどに」
「……絶望まみれの人生だったけど、キミと一緒にいた時間だけは唯一落ち着くことができたんだ」
「だから……想いだけでも、伝えたかったんだ……変なこと言って、迷惑かけてごめん」
その一言で俺は告白の言葉を終わらせた。
結果は予想外であった。
ナナが先ほどの俺とは比べものにならないくらい両目に雫を溜め、こぼし始めたのだ。
そして、ナナはとっさに俺に抱きついた。
「やだあ……!!やだぁ!!行っちゃヤダぁ!好きぃ!ボクも!ケイスケのことぉ……ううっ!」
「ナナ……なん、で……」
両想いなどありえない。
ヘイアンに前向きな予測を教えられてからも俺はずっとそう考えていた。
だから、俺は困惑した。
しかし、すぐにナナが悲しんでいることに意識が行き、俺の手は泣きじゃくるナナの頭をなで始めた。
「ううっ……うっ、うっ……」
気付けば、俺もまた泣いていた。
それから、俺たちは共に10分以上泣き続けていた。
そして、お互いが泣き止んだ頃には双方共に息切れしていた。
俺もナナも運動不足だったため、長時間の号泣で体力を使い果たしてしまったのだ。
「はぁ……はぁ……ごめん、ボクちょっと寝てもいいかな……」
「ふっー……ふっー……俺も、いいかな……」
俺たちは疲れたことにより、共に眠気に襲われてしたまった。
「じゃ、ボクの部屋に来てほしいな」
「えっ……いいの?」
「うん。そこで横になって休みながら、さっきの話の続き、しよっか」
こうして、俺とナナは同じ天井の下で寝ることになったのであった。
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