事件解決

『……四木村さん、喜多村さん。なぜ、あなたたちは死を望むのかな』


 俺たちが人質になってから数時間後、奥の部屋に入ってきたXが俺たちに疑問を投げかけた。


「……これ以上足掻いても幸せになれないことを悟ったから」


 俺は本心からの答えを口に出した。


『そうか……じゃ、次は喜多村さんの答えを聞きたいな』


「あっ、ああ……」


 急に回答を求められ、ナナが少し焦る


『大丈夫、答え次第で殺すとかそういう野蛮なことはしないから……ただ、少し気になったから』


「死にたい時に、いつでも死ねるようにするため……かな」


『そっか……贅沢者め!!』


 ドッ!


 即身仏Xがナナを蹴りつける。


「止めろおっ!!ナナを傷つけるな!!」


 俺は自分の保身などまったく考えずに即身仏Xに飛び掛かる・


『うるさい!!世の中には!死にたくても死ねない奴がいるんだ!!曖昧な理由で安楽死試験なんて受けようとするなぁ!!』


 即身仏Xは俺と取っ組み合いになって押されながらも自らの主張を叫び続ける。


「オマエこそ黙れ!!二条イツキ!!」


 自分優勢な取っ組み合いの中、俺は相対する人間の名を口に出した。


『な、なんでワタシの名を』


 パワードスーツ越しに、動揺した声が漏れ出た。


 


『……完敗だぁ。まさか、ワタシの正体を見破った上、パワードスーツを着た状態なのに取っ組み合いで圧倒されるなんて』

 

 取っ組み合いでもともと少なかった体力を使い果たし、床にひれ伏した二条さんが静かに敗北を宣言する。


 俺の握力や筋力はそこまでないため、俺の力が強いというよりは二条さんの素の力が弱いことが俺が彼女を圧倒した原因だろう。


「即身仏未満は安楽死できない状態を、Xは10およびその公約数5と2を表していると仮定して、正体にたどり着いたんだ」


『その通り……ワタシの下の名前は五つの樹と書いて五樹と書くからね。にしても、そんなわかりにくい暗号を解くなんて……キミはオタクかな?』


「パソコンオタクとはよく言われるよ」


「あっ……そういえばさ、ボクたちに渡したお菓子。……あれって、逆ダイエットの日にキミが泡海先輩と一緒に買ったお菓子の残りだよね」


 そう言ってナナが二条さんにお菓子の袋を見せる。


『その通りだよ……やっぱりお菓子でもちょっとしか食えなくてさ。だから、あなたたちに渡すことで無駄にしないようにしたんだ』 


「そっか……お菓子、ボクたちに渡してくれてありがと。おいしかったよ」


『ぁあ、感謝の言葉ぁ……ちゃんと同じことを淡海先輩にも言うんだよ』


 ナナの感謝の言葉を聞いた二条先輩は少し涙ぐんだような声でそう言った。


 

 

 その後、二条さんは自首し、俺たちは解放された。


 そして、警察に小一時間ほど事情聴取されたのち、俺たちは警察署から自宅への帰路に着くことになった。

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