幼馴染と昼食していたら爆弾を見つけた
「……オイ、これどう見ても爆発物だよな」
「だね……」
昼休み、俺は幼馴染と一緒に昼食を食べていた時に黒い文字で「X」と書かれた爆発物を見つけてしまった。
11月2日の4時間目はとても良いお昼寝日和だった。
前日臨時休業の静けさがウソであるかのように、騒がしい授業が展開されていく中、俺は夢を見ないレベルで深く眠った。
そして、目が覚めたときには4時間目が終わっており、目の前には弁当箱を持ったナナがいた。
「一緒にお昼……食べてもいいかな?」
「ああ、いいぞ。一人で食べるのも寂しくなってきた頃だし」
「じゃあ、教室の外で食べてもいいかな……?」
「俺はナナが指定した場所ならどこでも大丈夫だ」
その直後、俺はナナに袖を軽く掴まれ『カンコドリ』と呼ばれている南校舎のベランダへと連れていかれた。
私立花上高校はいわゆるマンモス校であった。
そして、大量の生徒を収容するために何度も増改築を繰り返していた。
その結果、大半の生徒が存在すら知らないような影の薄い場所が様々な校舎の各地にできており、『カンコドリ』もそのうちのひとつであった。
カンコドリは南校舎の最上階である5階にあり、床面積は5階の約半分を占めるほどに広い。
しかし、肝心の南校舎5階に行く教師や生徒がほとんどいないため、カンコドリは広さに反して存在を知っている人がほとんどいない施設と化してしまったのだ。
「広さに反して誰もいない」
「……こんなに太陽が眩しくて、空が綺麗に見える場所なのにね」
俺たちはカンコドリに着くと、各々の感想を述べた。
そして、無造作に置かれていた少し耐久性が心配になるプラスチックのベンチに座りかけた。
「さてと、食べるか」
それから、俺は今朝コンビニで買った焼きそばパンを取り出した。
「……ボクも、食べるね」
ナナも自分で握ったと思われるおにぎりを弁当箱の中から出して食べ始めた。
弁当箱の中にはまだ2つのおにぎりがあった。
「ごちそうさま」
俺は、焼きそばパン1つを平らげてその言葉を発した。
「……どう、おいしかった?」
二つ目のおにぎりを完食したナナが俺に語り掛ける。
「安定したおいしさだった。コンビニの食品はスーパーのお惣菜以上に味の質が安定していた」
「そっか……もう、満腹かな?」
「腹5分目ってとこかな……食べなきゃいけないのはわかっている。でも、俺はもう食事に娯楽性を見出せない」
「……そっか。じゃあ、この3つ目のおにぎりも私が食べていいかな」
次の瞬間、俺は理性よりも早く本能が動き、下記のような発言をしてしまった。
「いや……ナナのおにぎりなら、1個食べてみたいな」
想定外だった。
自分の中に食事を求める食欲が残っていたことに。
「……大丈夫?無理、してないよね」
「ああ、胃袋的には大丈夫。それに、心が求めている。だから、食べてもいいかな」
「いいよ。……はい、どうぞ」
俺はナナがラップを巻いた状態で渡してきたおにぎりを受け取り、食べ始めた。
おにぎりはとても美味しかった。
ちょうどいい塩の配分具合と佃煮の具が作り出す純粋な味の協調性は、コンビニ料理と外食ばかり食べていた俺に懐かしさを思い出されてくれた。
俺は5分ほどで最後の一口にたどり着いた。
口の中で最後のおにぎりを味わっている時、俺はカンコドリの排水溝の溝に何かあるのに気づいた。
「ごちそうさま」
口内を空にしてからそう言った後、俺は排水溝に近づいた。
そして、その何かの正体が時限爆弾であることに気が付いた。
「い、いそいで先生にしらせるぞ!」
俺はナナと共にカンコドリから職員室に向かい、爆発物の件を知らせた。
直後、カンコドリで実物を見た先生が警察に通通報した。
結果、校舎は爆発しなかったものの、僕たちの午後の授業は吹き飛んで家に帰ることになったのであった。
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