第5話 登録と盗賊と先輩冒険者
「あ……お、おはよう、ございます」
鍛錬や朝食を終え、支度をしてから宿の一階に降りると、エヌさんが扉の前に立っていた。
「エヌさん、おはよう。えっと……今日は、冒険者ギルドに行くんだよね」
「あの……」
エヌさんは、言いにくそうに少し目を泳がせている。
「……登録料、貸してもらえないでしょうか……」
「え?……あっ、ごめん!忘れてた!」
……すっかり忘れていた。昨日、そんな話をしていたような。
「もちろん!えっと、銀貨一枚で、良いんだよね?はい」
「……あ、ありがとうございます!大切に使います」
「と言うか、俺も今から冒険者ギルドに行くから、お詫びもかねて、案内するよ」
「え?……あ、はい、お願いします」
そして、二人で冒険者ギルドに向かうことにした。
「あの……昨日言いかけたことなんですが……ノモサさんは、魔術を覚えたい……ですか?」
「え?」
エヌさんが話しかけてきた。魔術?うーん……
「まあ、使えるなら、使いたいけど……」
「それなら!……えっと、私が教えましょうか?」
「本当に?」
「はい、教会で……あ、えっと、習っていたので……」
「へえ、そうなんだ。じゃあ、今度、空いている日にでも、お願いしていいかな」
「はい!任せてください!」
「あ、大通りに出るから、はぐれないようにね」
「はい」
まだ朝だというのに、大通りには多くの人が行き交っている。はぐれないようにとは言ったものの、人込みを歩くのに慣れていないので、早くは歩けないし、はぐれることは無いだろう。
「ここが、雑貨屋。いろいろ揃ってるから、後で来るといいと思うよ。それで、ここが串焼きの店。今は閉まってるけど、夕方辺りなら開いてる。後は……」
「おお……」
色々と説明しながら町を歩いて行き、青い扉の建物の前に着く。
「それで、ここが冒険者ギルドだよ」
「あ、ありがとうございます!」
ノモサとエヌは、そのまま冒険者ギルドの中に入る。朝なので、依頼を受ける人、依頼する人等で、混みあっている。
「じゃあ、あっちのカウンターに並べば登録できるから!エヌさん、頑張ってね」
「あ、はい……!」
そして、中に入ったところで別れた。俺も、依頼を受ける為に別のカウンターのところに並んだ。
混んでいた為、少し時間が経った後、俺の番が回ってきた。
「おはようございます……あ、ノモサさん!丁度いいところに!」
「お疲れ様です、アネッサさん。丁度いいってどういうことですか?」
混んでいて気づかなかったが、魔法オタクの受付嬢、アネッサさんのところに並んでいたらしい。
「少しお時間いただいてもいいですか?ギルドから依頼したいことがあるのですが……」
「はい、大丈夫です」
ちらっと横を見ると、エヌさんはカウンターのところで登録を行っている所だった。まあ、大丈夫そうだな。
「ありがとうございます。じゃあ……」
「では、僕に付いてきてくれ」
「え?」
カウンターの奥から、綺麗な鎧を身に付けた冒険者が現れた。
「僕は、魔剣士、ヤベッツ。金級冒険者だ。よろしく、ノモサ君」
「え?……あ、俺はノモサです。よろしくお願いします」
「うんうん、ありがとう。じゃあ、行こうか」
ヤベッツさんは、金級冒険者らしい。金級って、上から二つ目の級で、やっと鉄級に上がった俺と比べて、ずっと上の人だ。
ヤベッツさんは、カウンターを出て、二階に上がっていく。
「ノモサ君は、まだこの町に来たばかりだったよね」
「はい。まだ、半月位です」
「へえ。……あ、そういえば、登録して半月で鉄級に上がったんだってね。」
「はい。昨日上がったばかりですけど」
「その前は、どこで何をしてたの?」
「あ……故郷の村で、自警団として働いてました」
「へえ。どこの村?」
「知ってるかわからないですけど……コシュ村です」
「ああ、ここから南に三日位行ったところにある村だよね」
「?……いえ、北に三日位のところです」
「え?あ、ごめんごめん、そうだったっけ。……あ、この部屋に入ってね」
「あ、はい」
依頼って言ってたけど、何だろう?昨日の今日だし、鉄級に上がったことに関係しているんだろうけど……
ヤベッツさんと向かい合って座る。
「ここ最近、盗賊による被害が出ているのは、知っているかい?」
「え?……はい。町で噂になってましたし」
「なら、話は早いね。盗賊のことは、冒険者ギルドでも問題視しているし、依頼もいくつか出ているんだ」
ヤベッツさんは、少し声を潜めて話す。
「明日。冒険者による討伐隊が、盗賊を掃討する」
「え?」
「ノモサ君には、他の冒険者と共に物資の運搬と、護衛を行ってほしい」
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