第3話 冒険者ギルド
「あの、冒険者ギルドって、どこにありますか?」
「ああ、さっきの!そう、聞けば、この子達、迷子になっていたそうじゃないですか。いや、本当にありがとうございました。あ、冒険者ギルドですよね。南通りの通り沿いにある、青い扉の建物……あ、今地図を描きますから、少し待ってもらえますか?」
部屋を出て、下の階の女将さんに尋ねてみると、親切なことに、地図までもらってしまった。
地図を見ると、この町の作りがよくわかった。中央広場から見て、四方向に伸びている大通りは、そのまま東西南北の名前が付いている。今日町に入ってきたのが、北の門で、『白兎の宿』があるのが、北通りと東通りの間……で、冒険者ギルドがあるのが、南通りの通り沿いらしい。
「へえ、色々な店があるんだな……あれは、洋服の店かな。あれは……」
町を歩いていると、村との違いに驚く。大通り沿いには、大きな店が建ち並んでいて、常に馬車や人が行き来している。村の祭りの時でさえ、こんなに混んでいなかったのに。ここの辺りの店を回っているだけで、一日は余裕でかかりそうだ。今度、剣とかのお店を覗いてみようかな。
「青い扉……青い……あ、あれじゃないか?」
中央広場を過ぎ、南通りに入ってすぐ。良く目立つ、三階建ての建物が見えた。扉の色は青だし、間違いないだろう。
扉の前に立ち、取っ手に手をかける。
(冒険者になることは、目的じゃない。一歩目だ。剣の腕を磨いて、強くなることが目的だ。それは、忘れないようにしないとな)
それが、今のところの目標だ。
ちなみに、昔冒険者だった村のじいさんから、一通り冒険者について話は聞いてるけど、もう三十年以上昔の事らしいし、変わっているだろう。
「し、失礼しまーす」
そう言いつつ、中に入る。
中に入ると、カウンターがいくつも並んでいて、横の壁には掲示板のようなものが設置されている。聞いていた通りだ。
床は綺麗に掃除されているし、中にいる冒険者は、二、三組だけだった。まだ昼過ぎだからかな?
ひとまず、開いているカウンターが一つしか無かったので、そこに向かう。綺麗なお姉さんが受付に立っていた。あ、受付嬢ってやつか。
「冒険者ギルド、オスター支部にようこそ。依頼のご相談ですか?」
「冒険者になりたいんですが……」
「登録、ですか?……えっと、登録料として、銀貨一枚を頂いているのですが、よろしいですか?」
登録料?そんなものがあるんだ。良い宿を見つけられたし、まだ銀貨も金貨も余っている。銀貨一枚を支払う。
「では、少々お待ち下さい」
「あ、はい」
そう言うと、受付嬢は一度カウンターの向こうに姿を消し、一枚の紙を持って戻ってきた。そして、ペンと共に、渡される。
「では、こちらの紙に記入をお願いします……あ、文字の読み書きは、出来ますか?」
「はい、出来ます」
えっと、『名前』……ノモサ、『年齢』……18、『主な使用武器』……剣
後は『属性魔術』と『固有魔術』?って、何?
「えっと、この、属性魔術と、固有魔術って、何ですか?」
受付嬢のお姉さんに聞いてみると、身を乗り出す勢いで話し始めた。
「あ、知らないようでしたら、私から教えます。属性魔術は、火、水、土の三属性の魔術で、詠唱によって魔素を消費する、再現性のある魔術の事です、皆さんが魔術、と聞いて思い浮かべるのは、こちらだと思います。それに比べて、固有魔術は、個人が生まれつき、あるいは後天的に習得する三属性に分類されない魔術を指しまして、言ってみれば、その他の魔術、といったところでしょうか。使える人はかなり珍しいですし、自覚が無いことも多々あるんですよ、あ、その中でも有名なのは、召喚魔術、精霊魔術、後は、勇者が使っていたという光魔術、後は……あ、すいません、長々と話してしまって」
「あ、いえ」
「私、こう見えて魔術がとっても好きなんです」
いや、今のを見ていればわかるけど。
「まあ、自分は使えないんですけどね。魔術について詳しく知りたいなら、私に聞くか、上の階にある書庫に行くか、私が教えますね?」
「……あ、はい」
えっと……結局、魔法の種類が違うってこと?まあ、魔法なんて使えないし、空欄でいいか。
それから、いくつかの項目を埋めて、書き忘れが無いか一通り見た後、渡した。
「先程は失礼しました。はい、ノモサさんですね……はい、大丈夫です。では、冒険者証の発行に十分程度時間がかかります。その間に、冒険者に関する説明は受けられますか?」
説明?まあ、受けておいた方がいいだろう。
「あ、お願いします」
「承知しました」
受付嬢は、冒険者証の発行を別の人に頼んだ後、冒険者に関する説明をしてくれた。
冒険者はランク分けがされており、下から木、鉄、銅、銀、金、白金と分けられているそうだ。木級から始まり、そこから依頼をこなし、その達成率や魔物の討伐歴等を元に、ランクが上がっていくらしい。ただし、銀から金、金から白金に上がる際には試験を突破する必要があるそうだ。
「後は、パーティーのことについて、ですね」
冒険者同士で、依頼達成の際に協力しあう、パーティーを組むことが出来る。継続してパーティーを組む場合は、ギルドに申請を出しておくと固定パーティーとして登録が出来るという。依頼達成のが容易になる上、依頼の受諾、報告の手続きが楽になるそうだ。もちろん、パーティーを組むかどうかは個人の自由らしい。
他にも、依頼を受ける際の注意点や、ギルドや冒険者証の利用方法等を聞いた。
「何か、ご質問はありますか?」
「あ、いえ、大丈夫です」
「では、冒険者証が出来上がりました。こちらが、ノモサさんの冒険者証です」
「ありがとうございます」
冒険者証を渡された。表には、『ノモサ』『木級』とだけ書いてある。この冒険者証は、魔道具を使うとさっき登録した情報を読み込むことが出来るらしい。それで、身分を証明するのに使用できるという。
去ろうとしたが、最後に一つだけ聞いていないことがあった。
「あ、そういえば、お姉さんの名前を聞かせてもらってもいいですか?」
「名乗ってませんでしたね。私はアネッサと言います。これからも、よろしくお願いしますね?」
「はい、俺は、ノモサです。よろしくお願いします」
「それでは、頑張ってください!」
その後、 『白兎の宿』に戻り、部屋で少し休んでから夕食を取った。夕食も、素朴だけど、温かくてとっても美味しかった。大満足だ。そして、久しぶりにぐっすりと眠った。
そして、半月が経過した。
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