第11話 本当の実力

「さて、どこからでもかかって来てください」


ルイミーさんと、向かい合う。この人が、どれくらい剣を扱えるのかわからないけど、どうせなら勝ちたい。

 呼吸を整えて、剣を構える。ルイミーさんは剣を両手で前に構えている。かかって来てと言うのならば、まず打ち合ってみるか。


「行きます!」


 ルイミーさんの剣めがけて、大きく踏み込み、右から切りかかる。

 これで、ルイミーさんがどれくらい剣が扱えるのかわかるはず……って、え?


「……」


 剣が当たる瞬間、ルイミーさんが消えた。移動する兆しは無かった。魔術……?いや、最初は剣しか使わないって言っていたはず。

 大きく剣を空振りしてしまったため、体勢が崩れる。って、違う。ルイミーさんはどこに行ったんだ?左右を見ても、いない。


「こちらです」


 真後ろから声が聞こえた。振り返ると、手を伸ばせば届くような距離に、ルイミーさんがいる。


「せいっ!」


 ルイミーさんの姿を見つけた瞬間、振り返る勢いも利用して、剣で切りかかる。今度は、確実に当てる!


「……」


 しかし、ルイミーさんには当たらなかった。今度は、後ろに避けた為、ギリギリ見えた。当たるか当たらないかのタイミングで、後ろに跳んだのだろう。隊長やグラフ達が、感嘆の声を上げている。


 今から、このまま切りかかっていても、多分当たらない。

 一度大きく息を吸い、吐く。


「どうしました?ノモサ君」


 ルイミーさんは、かなり強い。多分、魔術は使っていないだろうけど、動きだけでわかる。


「今度は、ルイミーさんの方から来てくれませんか?」


 剣を受ける方なら、何とかなるかもしれない。と言うか、そもそも俺は受ける方が得意で、自分から切りかかることはあまりしないし。


「……そうですか。わかりました」


 ルイミーさんはそう言うと、剣を下段に構えた。

 よし、今度こそ、ルイミーさんの動きを見極めてやる!

 

「……」


 剣を構え、ルイミーさんをよく見る。動く気配は無い。無いが、先ほどのように、動く兆しが無い状態から急に動いてくる可能性が高い。


「行きます」


 ルイミーさんは、律儀にそう宣言した。よし、動きをよく見


「え……?」


 剣に強い衝撃が走り、手から弾かれた。ルイミーさんが、目の前で剣を振り上げている。いや、下段に構えていたから、剣で弾いたってこと……?


 後ろで、剣が地面に落ちる音がする。


「さて、私は、そろそろ魔術も使用します。剣を拾ってください」


 勝てない。


「貴方の実力を見る為の試験です。別に、私に勝て、とは言っていないですが」


 勝てる未来が見えない。


「わかりました」


 よし、グラフ達が見ているんだし、このまま終わるのは良くない。やれるだけのことは、やってみようか。それで、無理なら仕方がない。実力不足だった、ということだ。

 歩いて行き、剣を拾う。


「よろしくお願いします」

「いつでも、かかって来てください」


 ルイミーさんに向けて、切りかかる。




 その後も、一方的な試合が続いた。ルイミーさんは、途中途中でファイヤーウルフロウも使用していた火の魔術も使ってきたが、剣で切りかかって来ることは無かった。

 最後は首筋に剣を突き付けられて終わった。隊長やグラフ達は、ねぎらいの言葉をかけてくれたが、負けは負けだろう。




「ノモサ君と話すことがあるので、皆さんは戻ってください」


 その後、ルイミーさんの言葉で観戦していたみんなは戻っていき、訓練場には二人だけになった。


「お疲れ様です、ノモサ君」

「それで、推薦は、してもらえるんですか?」


 一番気になっていることを、聞く。


「それは……」

「はい。どう、でしょうか?」














「……不合格、です」

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