第10話 最終試験
次の日。前日の怪我も特に響いていないし、ルイミーさんに貰った回復薬が効いたのだろう。いつも通り鍛錬を行った。
「ルイミーさん、昨日の推薦の話ですが……」
「答えは、決まりましたか?」
「はい」
鍛錬後、朝食の際に、ルイミーさんに話した。
「まだ、剣を極められるかどうかはわからないですけど……学院に入ってみたいです」
ルイミーさんは、少し驚いたような表情をしていた。
「貴方の意思は伝わりました。では、試験をします」
「はい?」
試験?どういうこと?
「試験って……何ですか?」
「まだ、貴方を推薦すると決めたわけではありません。実力を確かめるために、試験をしたいと思います」
「それって、昨日戦ったやつとは違うんですか?」
「ファイちゃんと戦ってもらったのも、試験の一環ではありましたが、これは……そうですね、最終試験です」
「そう、ですか」
そんな話、昨日は一度も言っていなかった。まあ、どんな試験でも、乗り越えてみせるけど。
「それで、どんな試験なんですか?」
「昨日と同じく、模擬戦です」
「わかりました。じゃあ、仕事があるので、隊長さんに伝えて……」
「模擬戦は、詰所の訓練場でやります。その場で、私が伝えます」
「あ、そうですか」
いつの間にか、話は通してあるらしい。
支度をして、自警団の詰所に向かう。
ルイミーさんは、いつも通りの赤いローブを着ている。まっすぐ、詰所に向かって歩いている。
そういえば、初日に俺の家の場所が分かったのは、隊長さんに聞いていたからなのだろう。
ルイミーさんを追いかけて、詰所に入る。
「お、ノモサ、おはよー」
「グラフ、おはよう」
一昨日ぶりに、グラフと会った。ルイミーさんは、隊長さんと話をしている。
「聞いたぞー、そこの赤い人を、お前の家に泊めているんだってー?」
「まあ、ね」
「んで、今日はどこ番?」
「えっと、その前に、訓練場に行かないと。模擬戦をするから」
「ん、どういうことー?」
「後で話すよ」
「さて、行きましょうか、ノモサ君」
「はい、よろしくお願いします!……グラフ、後でね」
「ほーい、またなー」
ルイミーさんの話が終わったらしい。ルイミーさんの後に続いて、訓練場に向かう。
訓練場に着いた。
あれ、そういえば、今日はどんな魔物と戦うんだ?ルイミーさんが、召喚するんだよね?
「模擬戦の相手は、どんな魔物ですか?」
「……私です」
そう言いながら、ルイミーさんは、ローブの中から剣を取り出した。って、剣?
「え、待ってください、ルイミーさんが相手ですか?それに、剣を使うんですか?」
「不満ですか?」
「いえ、そういう訳では無いんですが…」
「では問題ないですね」
ルイミーさんって、魔術師なのに、剣も使えるのか?
「三本先取……」
ルイミーさんは、言葉を止め、考えつつ言った。
「いや、違いますね。一本のみで、私に当てるつもりでかかって来てください。私は、最初は剣のみで相手します」
「それって、俺に有利じゃないですか?」
「いえ、恐らく、きっと、ほぼ互角ではないでしょうか」
「そう、ですか……」
ルイミーさんは、数歩向こうに歩いていき、向かい合った。
「では、ノモサ君。準備はよろしいですか?」
え?もう始めるの?
急いで、剣を抜いて構える。
「はい、大丈夫です!」
「では、試験……模擬戦を始め」
「おー、本当に模擬戦やるのかーノモサ頑張れよー」
いざ、始めようとしたとき、グラフの声が訓練場に響いた。
思わず振り返ると、グラフが訓練場に入ってくるのが見えた。
その後ろから、自警団の隊長と、数人の隊員も来ている
隊長がルイミーさんに対して、申し訳なさそうに言った。
「あー、すまねえな。こいつらが見たいって騒ぐもんで。模擬戦とやらを見せてもらってもいいか?」
「ええ、構いません」
微妙なタイミングで入ってきたな。まあ、始まる前で良かったか。
「……さて、仕切り直して、試験、模擬戦を始めましょう」
「応援してるからねー」
色々あったが、試験が始まる。
ルイミーさんがどれくらい強いのかはわからないけど、推薦してもらえるよう、全力を尽くそう。
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