第4話 一日目の夜

 二人で、家に入る。ルイミーさんは、家の中を物珍しそうに見回している。

「すいません、掃除が行き届いていなくて……」

「一人で暮らしているなら、そんなものですよ」


 両親がこの村に来た時に新しく建てた家は、この村の中でもかなり大きく、居間の他に部屋が三部屋もある。それぞれ、両親、姉、俺の部屋だが、ルイミーさんには、姉の部屋を使ってもらえばいいだろう。


「ひとまず……居間に案内しますね」

「ありがとうございます」


 大きな荷物を持っているのであれば、部屋に先に案内しようかとも思ったが、身軽そうだし後回しでいいだろう。


 椅子に座って待ってもらい、荷物を自室に放り込んでから、お茶を用意する。


「お茶です」

「ありがとう」


 ルイミーさんは、フードを下ろしてから一口茶を飲んだ。

 俺は、テーブルをはさんで反対側に座った。


「……」


 変な空気が流れる。昼間ぶりだが、ルイミーさんの素顔は、やはり整っている。ルイミーさんも、じっとこっちを見ている。こんな時でも、グラフなら遠慮なく色々聞くんだろうな、等考えつつ、話題を振る。


「……あー、えっと、風呂、とかは無いんですけど、お湯なら用意できますが…」

「いや、魔法でお湯は出せるから、問題ないです」

「そうですか……あ、夕飯とかは、どうします?大したものは出せないですけど」

「……あ、では、一緒に食べても良いでしょうか」

「あ、はい、じゃあ待ってて下さい」


 宿代はきちんともらっているし、用意をした……が、本当に大したものは出せなかった。

 いつもの食事に加えて、両親がお土産として置いて行ったジャムを出した。何の果実を利用したものかわからないが、甘いので気に入っていたやつである。(ルイミーさんによると、「マーマレード」というらしい)

 食事中に聞いたことだが、ルイミーさんは、こう見えてまだ20歳らしい。俺が18歳なので、二つしか変わらないことに驚いた。いつも何の仕事をしているのかは教えてくれなかったが、王都のこととかに詳しかったので、王都出身であるのかもしれない。


 その後、ルイミーさんを姉の部屋に案内した。

「えっと、他に何か欲しいものとかありますか?」

「いや、大丈夫ですよ」

「では、また明日。何かあったら、向かいの部屋にいるので、声をかけてくださいね。えっと、ごゆっくりお休みください」


 扉を閉める。よし、今日は疲れた。もう寝ることにしよう。

 寝床に入ったところで、ふと考える。


 ルイミーさんは、明日、何をする予定なんだろう。家で留守番をしているのか、森に入るのか、それとも……

 まあ、明日聞けばいいか。

 眠りに落ちていく。

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