第8話 推しと先生
私が聞き間違えることはない。
前の人生ではもものせももちゃんにハマった頃には諭吉友香の動画は削除されていたし、CDは再生できなかったので聞かなくなっていた。
けれど今聞けばわかる。
「ちょっと若いけど、これ絶対もものせももちゃん」
Vtuberのいわゆる前世とか中の人というものに全く興味がなくて調べることもしなかったけど、まさか今の推しと未来の推しが同じ人だったなんて。
「どれだけ好きなんだ。私は」
二度目の人生でも聞き間違えることがないなら、きっとずっと好きなんだろう。
今から動けばもものせももちゃんには会えるかもしれない。
一緒に歌ってみる機会があるかもしれない。
そうなれるように私は動ける。動いて見せる。
「とりあえず!ボイトレどこがいいか、先生に聞いてみよう」
合唱部の顧問をしていた小鳩先生は、たしかに有名音大を出て公立の中高一貫校の教諭になり、合唱部顧問をしていたはず。
なら、知り合いのボイトレの先生とかいるでしょう。
あと、ギターとピアノを教えてくれる人ならなおよし。
「ライン交換してなかったな。メールして後輩に差し入れ持っていきながら会いに行こう」
膳は急げとメールをして明後日に会いに行くことにした。
「先生お久しぶりです」
「葵さん、久しぶり、元気そうで良かった。」
「はい、おかげさまで!」
今の部員は中学部を含めて45人ということなのでシュークリームを人数分買って行った。
小鳩先生が部員に連絡していてくれたのか私が伺ったときにはみんな揃っていた。
ジャグに麦茶も用意してあったので音楽室での他の先生達には内緒のプチパーティが始まった。
キャッキャしている後輩を見ていると、ニコニコしてしまう。
今の高等部の部長は私が高等部の部長をしていた頃に中学部の部長をしていた。
どうやってまとめていけばいいのか相談によくのっていたものだ。
手を振るとニコニコしながら手をふりかえしてくれた。
「後輩が可愛いのはわかるけど、さっさと本題に入ってしまいましょう」
「はい!お願いします」
メールでボイトレをしたいこと、先生を紹介してもらえないかということ。
できたら楽器も教えてほしいことを伝えていたので、今日は結果を聞くだけ。
「私の大学の友人で今はフリーのボイストレーナーている人がいる。一応ピアノは伴奏ができるくらいには引けるし、ギターは趣味でアコギを引くくらいだから教えることはできると思う」
「なら!」
「ただし、なんで急に歌を歌いたいと思ったのか聞かせてほしい。高校卒業する頃にはもうやらないと言っていただろう?」
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