第4話 両親の部屋の片づけと、予想外の幸運
朝ご飯を食べて、家のあちこちを修繕するために見て回った。
10年暮らしていなかった家の細かな修繕箇所を見つけるのは意外と苦労して、ああそういえばそうだったとか思い出しながらメモを取っていった。
「蝶番が壊れそうなのは新しいのに交換っと」
全然使っていなかった物置の扉は開けたときに異音がした。
中には小学校の時に使っていた教科書とか、母ががんばって取ろうとしていた資格の本、壊れた掃除機……
「中身はほぼごみと。紙資源と粗大ごみの時に出せばいいかな」
さいごに残していたのは両親の部屋。
なんとなく入りずらくて後回しにしていて。
前の時は入ることもできなかったけど、流石に精神的には10年経っているのでドキドキしながら、ドアを開けた。
「ゆっくり見るのとかいつぶりかわからないかも」
記憶の中にある両親の部屋とほとんど変わらないけれど、懐かしさで胸がいっぱいになる。
あまり手を付けるのもなんだか申し訳なく、電気とか壁の確認だけしようとカーテンを開けた。
「これ……お父さんまだ買ってたんだ。律儀に同じ場所に置いておくのらしいなあ」
父の唯一といってもいい趣味は宝くじを買うことだった。
いつもバラで10枚買って、300円になって戻ってくるそれは夢を語る父の記憶と一緒にあり、お酒もたばこも吸わなかったから、あの売り場が当たるらしいといそいそと買いに行く父の姿を思い出すことができる。
「新聞も一緒においてあるし。」
さすがに色あせてしまうから机の中にしまおうとしたそれを手に取ると、一つの数字に丸がついていた。
「ん?」
赤ペンで丸がついているのはこの前の年末ジャンボの当選番号の一つ。
一等の前後賞のところ。
「まさか?!」
隣に置いてあった宝くじを確認すると、同じ番号が、記載されていた。
「えっ?なんで?」
そういえば正月から父の挙動が変だった。
ニヤニヤしたと思ったら頭を抱えて、仕事忙しいんだろうとスルーしてたけど、そういうこと?
母もそのあたりからウキウキして、掛け持ちのパートをひとつにすると言っていたこともあった。
その理由がこれなら、わかる。
「旅行から帰ったら報告したいことがあるって言ってたけど、これかぁ」
まさか離婚?!とか思っていたけど、これならわかる。
もしかしたら家のリフォームとかも考えてのことだったのかもしれない。
机の上を片付けると、リフォームの資料や、海外旅行のチラシが出てきた。
浮かれてるというか、くたびれた顔をしながら仕事に行っていた父を思い出して、死ぬ直前までワクワクしていたのかもしれない。
少しだけ嬉しくなった。
二人での旅行で使い道について話し合ったりしたのかな……
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