第2話 神様らしき白い発光物

「ここは……」

「いわゆる神様が哀れな子供に慈悲をかける場所だよ」


病院のベッドで死にかけていたのに、突然真っ白や部屋にいた。

そして独り言をつぶやいたはずなのに、何かわからない発光物に話しかけられた。


「発光物とは失礼な、信仰する神様の形をとろうと思ったのに、君がどの神様も崇めてないからこの姿で出てきてあげたのに」

「いやいや、」


たしかに宗教を気にして生きては来なかった。

けれど、だからといって


「思考を読まれるのは嫌かい?」

「嫌ですね」

「勝手に流れてくるんだ、仕方ないのさ。そういうものとして諦めてくれ」


どうすることもできないというのもすごく、不愉快で。

久しぶりにあきらめとつらい以外の感情が湧き上がってくる。


「それでね、君がなんでここにいるかなんだけど」

「……天国ってわけでもないんですよね」

「そんな人間の空想見せてあげないよ。なんせ君はクモの糸で釣りをしていた僕の釣果なんだから」

「???つり?」

「そう。クモの糸って切れやすいじゃない、それで釣りをして引っかかった魂の望みをかなえるって遊びをしていたんだ」

「遊び……」


かみさまのかんがえるあそびってほんとにわかんない。

今言われたことの半分も理解できないのは私がばかだからだろうか?


「それで、久しぶりの釣果としてここに呼ばれたのが君」

「久しぶりの釣果」

「そう、30年ぶりくらいだったから何でもかなえてあげる。何がいい?」

「なんでも」


そういわれても、今の願いなんてもっと生きていたいしかない。

もう死んでしまったのに。


「うーんじゃあ、逆行でいいかな?」

「えっ」

「10年くらいなら何とかなるかな?さすがに死因の記憶は消すし、ここ3か月くらいの記憶はあいまいにしておくことになるけどそれでいいなら、もう10年生きてみる?」

「はい!!!!」


もう10年生きることができる。

それは今の私にとってはとても幸福なことで、あの頃もっとやっておけばよかったことがたくさんある。


「じゃあ決まりね、君の人生の分岐点に戻すから面白おかしい人生歩んでよ」

「……」

「あれ?聞こえてない?まあ、いっかじゃあ10年後にまた会おうね」


後半に何を言っていたのかわからなかったけれど、もう少しだけ生きていけると思ったら、


「いってらっしゃーい」


そこで立花葵の意識はまたしても失われた。こんなに心が弾んだことなんてないんじゃないかと思うくらいにはドキドキしながら。

次に目が覚めるときには、

目の前に人生で何度目かの絶望が目の前にあると知らずに。

次に目が覚めたら、目の前には両親の遺影と骨壺がおいてあるとも知らずに。

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