平和な時代へ……

「ルーク、あ~~ん。」

「うん、あ~~~ん。」

「何?このバカップル。」


 魔王城のダイニングでバカップルの甘々なケーキの食べさせ合いを見せつけられている剣聖が呟く。


「……しかし、さっきまで殺し合いしとったうちらが揃ってお茶しとんのんも大概やけどな。」

「ふむ、確かに。」


 今、この部屋にいるのは魔王と勇者のバカップル以外に、勇者の仲間3人とバルバロッサだ。


「まあ、こんな展開は想定外でしたが、あのバカップルを見てるとどうでもよくなりますね。」

「「「うんうん。」」」


 大賢者フィリスの言葉に頷く剣聖リン、怪盗メリッサ、魔王の腹心バルバロッサの3人。先程まで死闘を行っていたとはいえないほどの和やかな雰囲気になっているのはバカップルのせいだ。


「でも、いいのか?我々を倒さなくて。」


 バルバロッサは『そういえばこいつら魔王を討伐に来た勇者一行だったなぁ』と思いだしたのか、勇者の仲間たちに確認をする。


「まあ、国の命令での魔王討伐だが、すでに勇者が国と交わした交換条件が満たされないからな。」

「魔王討伐後にすぐ結婚するために指輪まで用意してましたからね。」

「うちなんて、もし魔王に負けそうになったら魔王城から逃げ延びてアルノ村のフィーネに渡すように遺書まで預かったんやから……。まさかそのフィーネが魔王やとはなぁ。」

「……問題なさそうだな。」


 勇者の仲間たちの発言に苦笑するバルバロッサ。まあ、人間側からすれば大問題だろうがそれは置いておく。


「ま、最初っからフィーネさんへの愛がすごかったからなぁ……。」

「そ、そうだったのか。まぁ我々も世界征服の理由が『世界征服してどこかにいるだろう魔王様の幼馴染みの少年を探し出して魔王様と結婚してもらう。』だったからな。」

「「「やっぱりバカップルになるべくしてなったんだな(やな)(ですね)。」」」


 その言葉に対して苦笑いをしながら頷くバルバロッサだった。





++++++++++++++++




「おとーさま、かけた。」

「おー上手じゃないか。流石ルーナだな。」


 父親にわしわしと頭を撫でられ、満面の笑顔を見せる少女――――ルーナに描いた絵には子供が描くような両親の姿が描かれていた。まあ、描いた少女はまだ3歳なので年相応の絵ともいう。


「どうしたルーク?」

「ああ、フィーネか。ほら見ろルーナがこの絵を描いたんだ!」

「おお、すごいじゃないかルーナ。よく描いてくれた。そうだ、額に入れて執務室に飾ろう。いや、玉座の間の方がいいか。」

「……居室にしてください魔王様。」


 両親揃って親バカである。そんな両親を諌めるバルバロッサ。この二人が再会してからバカップル=親バカを相手にしなければならなくなって疲労が増えた魔王軍四天王筆頭である。


「それよりも、お二人に来客です。」

「来客?そんな話は聞いてないわよ。」


 首をかしげるフィーネ。


「ええ、突然来られましたから。ルーク様の元お仲間の三人です。」

「ああ、そうなのね。ここに通して。」


 フィーネの指示を受け、ルークの元仲間の三人が入ってきた。


「やあ、フィーネ、ルーク久しぶりだな。」

「人間の国の話、持ってきたで。」

「まあ、勇者が魔王と結婚したら大いに荒れますよ。」


 元勇者一行の三人は人間としては勇者に次ぐ実力者だったので色んな国から引く手あまたである。だが、三人揃って「困った時は話を聞くが、基本自由で。」と言って、全て断って三人で旅をしている。

 魔王軍と人間の戦いは、魔王軍は魔王フィーネが世界征服しようとしていた理由がルークと結婚するためだったし、人間側も最大戦力の勇者ルークが魔王討伐する条件としてあげていたのがフィーネとの結婚であり、双方道半ばで最終目標の方が達成できてしまい、これ以上戦う理由をなくしてしまったがゆえ自然と停戦状態になった。


「ま、この平和な時が続いてくれることを祈ってるよ。」


 そう言って勇者は魔王の大きくなったお腹を優しく撫でるのであった。

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決戦!魔王城 中城セイ @Sei_N

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