魔王城玉座の間の決戦 ~魔王VS勇者~
話は20分ほど遡り、バルバロッサと勇者の仲間たちが戦っている最中、玉座の間に勇者が到着した頃に戻る。
「勇者よ。よく来た……な?」
「魔王!お前を倒し……て?」
「「も、もしかして……。」」
魔王が突入してきた勇者に対し口上をあげて勇者の姿を確認し驚くのと、玉座の間に突入した勇者が口上をあげた魔王の声を聞いて驚くのは同時だった。
「お前、そんな姿してるけど、フィーネじゃないか。」
「そう言うお前こそ、ルークじゃないか久しぶりだね。」
勇者ルークは剣を納め、魔王フィーネは顔を隠していた仮面を外し、互いに再会を喜びあった。
「最後に会ったのは5年前だったか?」
「そうね。あなたがお父様の仕事の都合で村を離れてからだからそれくらいになるかな。」
「あー、すまなかったな。俺は村に残りたかったんだが……。」
二人は玉座の前にある段差に並んで座りながら、昔話を始めた。
「仕方ないじゃない、あなたのお父様は私たちの村に派遣されていた騎士だったのだもの。それにあの頃は私たちってまだ13歳だったから、親に逆らってまで村に残ることはできなかったわよ。」
「でもな。」
「いいじゃない、こうして再会できたんだから。」
「そうだな。ところで、フィーネはなんで魔王をやってるんだ?」
ルークがそんな疑問を言うと、フィーネは苦笑いをする。
「いやね、ルークと別れて2年した頃だったかな。ほら、私ってお母さんしかいなかったでしょ。実はお父さんが魔王で、後継者として迎えに来たのよ。」
「……マジかよ。」
「うん。私って歴代でもかなり高い魔法の才があるみたいで、お父さんが引退して隠居するからって2年かけて頑張って魔王になるための勉強したんだ。魔王になって世界征服してルークに再会するために、頑張ったの。」
「そ、そうか。」
勇者ルークは魔王がそんな近くにいたことに苦笑いをするしかないみたいだ。
「ルークはどうしてたの?」
フィーネはルークに今まで会えなかったときのことを聞く。
「ああ、俺の方か……、俺はあの後、親父と共に王都に向かっていったんだ。それで親父のすすめで《鑑定》を受けたんだ。そしたら俺の職業が[勇者]だってよ。それで国王から魔王討伐の命が下りてな、それで仲間と魔王討伐の旅をしていたんだ。色々あって、この魔王城にたどり着いたわけだ。」
「……そうなんだ。」
勇者と魔王、二人の間に沈黙が流れた。
「そ、そういえば、フィーネが魔王やってるなんて大変そうだな。」
沈黙に耐えきれず、勇者が魔王に尋ねた。
「ああ、大変だよ。私がまだ若くて経験が浅いって言って私のいうことを聞かない頭の固い老害を黙らせるのは大変だった。ま、実力で黙らせたけど。」
「あーどこもそうだよな。俺の方も勇者だから魔王を討伐しに行かなきゃならないって言って嫌がる俺を強引に行かせようとする爺がいたからな。」
ルークの返しに二人揃って笑う。
「どの世界も同じだね。ところでルークの仲間たちってどんなひと?」
「ああ、俺の仲間たちか。まず最初に仲間になった……というか、連れていくことになったのはリンだな。親父の友人の娘なんだけど、[剣聖]っていう職業でめっちゃ強いんだよ。で、次に仲間になったのはフィリスだな。彼女は途中でたちよったエルシオン王国にある賢者の塔に所属していて[大賢者]なんだ。ものすごい魔法の使い手だよ。で、最後に仲間になったのがメリッサで、グロバスデュア帝国の帝都を騒がしていた怪盗なんだ。探索とかすごいよ。」
「……そう。」
ルークが仲間の話をしだしたら少しずつ機嫌を悪くするフィーネ。それにルークは気付いていないようだ。
「そういえば、俺は勇者として魔王討伐をするにあたって、ひとつ条件を付けたんだ。それはね、魔王を討伐して凱旋したらアルノ村のフィーネと結婚させてもらうって条件なんだ。」
「……えっ?」
ルークは立ち上がりフィーネの真正面に立った。それにつられてフィーネも立ち上がる。
「フィーネ、こんなかたちになったけど……。」
ルークは跪き、アイテムボックスから小箱を取り出した。
「フィーネ、貴女が好きです。結婚してください!」
勇者ルークは魔王フィーネに小箱を開けて中身を見せる。その小箱の中に入っていたのは、指輪だった。
魔王は、その指輪を見て口に手を当て、頬を赤く染め、うっすら涙を流しながら勇者に返答する。
「……はい、喜んで。ルーク、ありがとう。私も、貴方が好きです。」
勇者ルークと魔王フィーネはお互い募らせた初恋を成就し、幸せそうに抱きしめ合うのだった。
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