中村屋の創業者夫婦として、若き日の二人の写真を見たことがありました。
特に、黒光さんの、目鼻立ちのはっきりした可愛らしい様子から、なんて素敵なご夫婦が創業者だったのだろうと、そんな風に思っておりました。美味しいパンとカレーをありがとう、とか思いながら。
しかし! 全然違ったのですね。
この時代だって、世間は小姑だらけだったろうし、色んな事も言われたでしょうけど、それを良くわかっていながらぶっちぎる黒光さんの強さ、すごいの一言でした。人は見かけによらないものだなと、何度も思いました。もしかすると、後の黒光さんは、また違う顔をしていたのかもしれませんが。
そんな風に、自分の感情にしたがって突き進む黒光さんが、離婚をしなかったのも、また不思議。人とは摩訶不思議なものだと、うなりました。
この小説は、黒光さんのぶっ飛び具合だけでなく、この時代の地方の生活のリアルな描写など、新しく知ることがたくさんありました。それも含めて、面白かったです。