第二章

第15話 冒険者ギルド

 翌朝、川沿いに下流へと進むと広大な麦畑が現れた。ちらほらと農作業を始める人々の姿が見えて、一応だから聞いてみることにする。ちょうど近くを歩いている農夫さんがあって、彼とも目が合ったのだ。


 「失礼する、町へ行きたいのだが、どういう道に進めばいいかわかるか?」


 私からの質問に農夫さんは目を丸くして私を見つめる。


 「うん?虫?虫が喋ってるぞ。なんだ。」


 喋るカイコを見るのは初めてみたいだ。


 「町へ行きたいんですけど、教えてくれませんか?」


 アヴェリーから助け船が出される。


 「うーむ、そうだな。町は、あの大きい道に沿って、嬢ちゃんが歩いて来た方向と反対に進むと出るよ。それより、その虫はなんだ。」

 「私の大事な友達です。」


 アヴェリーからしたら私は大事な友達なのか。


 「でも喋ってるぞ。」

 「特別な虫さんなんです。」


 アヴェリーが続けて答える。


 「魔物じゃないのか?」

 「多分、違うと思います。」


 魔物であってるが、あえて言わない。私は空気が読めるカイコなのだ。


 「そうか、まあ、俺はただの農夫だ。衛兵でも冒険者でもない。道中気を付けるんだぞ。」


 そう言って農作業に戻る農夫さん。


 「なんか、親切だったね。」

 「余裕があるんだろうね。」

 「余裕?」

 「そう、自営農じゃないかな。土地を持ってる人間なら、自分の力でお金を稼いでためることが出来るんだよ。そうやって稼いで懐にも余裕があると、人は親切になるものなんだ。」

 「そうなんだ。」


 念のため鑑定して見ても思ったこと以上のことは書かれていなかった。


 「これからは人を見る機会も多くなるはずだから、人を目る目を養った方がいい。」

 「どうやって?」

 「その都度教えるよ。」

 「わかった。頼りにするから。」

 「任せろ。」


 それから三十分ほど歩いたら、高い城壁が見えてきた。水路が城壁を囲っていて、城門はそのまま橋になっている。まさに中世って感じだ。ただ、城門の向こう側に見える町は、ここら一体が暖かいせいなのか、ツタに覆われた壁が多く、家の前には木々が並んでいる。


 城門には時折荷馬車が通って、往来する人々は数える程度だけど、絶えることはない。鎧を着こんで、ハルバードを手にした門番が二人、門の両側に一人ずつ立っている。


 「事情とか聞かれたりしないかな。」


 森の中でアヴェリーからの弱音を聞いたことがない。人相手はそうでもないみたいだ。


 「聞かれて困ることもないよね、別に。」

 「私まだ子供だし。」

 「大丈夫だよ。何とかなるから。」


 堂々と(?)城門をそのまま通ろとすると案の定、衛兵に呼び止められる。


 「止まれ。いくつか質問に答えてもらうぞ。」

 「はい、何でしょう。」


 アヴェリーが少しおどおどしながら答える。


 「どこの出身なのか言え。」


 別に高圧的な雰囲気ではなく、事務的な質問と言った雰囲気だが、なぜそれを調べるのか。どこからか子供のスパイでも送られたことでもあるんだろうか。それとも魔物が子供に偽装する可能性でも考慮してる?そういう魔物がいる?わからない。


 「森の近くにある村から来ました。」

 「どこの森だ?」

 「海と隣接している森です。」

 「あそこの村か。大人と一緒じゃない理由は?」

 「ここまで一人で来ましたから。」


 聞かれたことには全部答えるアヴェリー。問題ないのでは?そう思っていたら。


 「大変だったな。その虫はなんだ。」


 やっぱり聞かれるか。


 「私は喋るカイコだ。」


 だから今度は私が答える。


 「喋るのか。」

 「喋るのだ。」


 カイコが喋ったら何か困るのか。


 「魔物なんだよな。」

 「それがどうした。」

 「やけに潔いな。嬢ちゃんの使い魔なのか?」


 その質問にアヴェリーが答える。


 「友達です。」

 「友達だよ。」


 私も続けて主張する。


 「そうか、ならいい。その槍はなんだ?半魚人の槍だろう。普通の子供が持つものじゃない。どこで手に入れた?」

 「私が倒したのを使ってるのだ。」


 私がそう答えると衛兵は少し驚いた顔をした。


 「お前、そのなりで半魚人を倒せるのか。」

 「それくらいへっちゃらさ。」

 「自信満々じゃないか。何か特技でもあるのか。」

 「魔法が使える。」

 「それはすごい。」


 これは信じてないな。


 「この場で見せてもいいんだぞ。」

 「それはやめた方がいい。仮にそれが事実だとしても、騒ぎを起こすのは得策じゃない。わかるか?虫。」

 「私は喋るカイコだ。」


 私の答えに衛兵はやれやれと首を振る。


 「虫だろ。それより嬢ちゃん、その槍は自分で使うのか?それとも運んでるだけか?」

 「自分で使ってます。」

 「見かけによらず、実力があるんだな。なら冒険者ギルドに入るか、傭兵になることだ。冒険者ギルドは大通りに進んで、城へ向かう道の途中にある。傭兵になりたいなら、酒場で聞いてみるんだな。通っていいぞ。」


 通行証とかはいらないみたいだ。衛兵はちゃんと仕事をしていた。しっかりしている町でよかった。賄賂とか求められたらその場でぶちのめしたぞ。


 「めっちゃ緊張したよ。」


 アヴェリーが胸をなでおろしながら言う。子供が大人と話すのは緊張するのは当たり前だよね。


 「ほら、問題なかったじゃん。」

 「でも魔物だって。怒られるんじゃないかなって。」

 「怒られないさ。この見た目だと、誰も怖がったりはしない。」

 「可愛いもんね。」


 否定はしない。カイコは可愛いのだ。


 「それより、これからどうする?冒険者ギルドに行く?それとも酒場?」

 「冒険者ギルド。お金ないからさ。」

 「まあ、それもそうか。素材換金しないと。」


 このために影狼の毛皮を何枚か持ってきてる。大通りを通ると、市場を突っ切ることになった。果物や野菜、肉や魚も並んでいる。


 魔物の肉もちらほらと見える。屋台ではパンに肉を挟んで売っていた。ハンバーガーか。中世でハンバーガーか。


 市場は多くの人々が往来しており、それなりに賑わっていた。ドワーフやエルフもちらほら見えるけど、獣人とかはいないみたいだ。単純に種族としてこの世界に存在しないのか。


 「お腹空いてない?」


 美味しい匂いがしているので、アヴェリーに聞いてみる。ちなみに今の私はアヴェリーの方にちょこんと座っている。変に飛び回るよりこっちの方が見失う心配もなくていいだろうと思ってのことだ。


 「少し。換金したらなんか買って食べよう。」

 「私も葉っぱが食べたいのだ。」

 「果物は?」

 「果物も食べたい。」


 ふふっと笑うアヴェリー。何がおかしいのやら。やがて冒険者ギルドらしき建物の前にたどり着いた私たち。


 「冒険者ギルドって、あの建物かな。」


 アヴェリーが建物を見上げながら言う。三階はする、周りの建物より一回り以上大きい建物だった。木でできた大きな門は開けっ放しになっている。


 「武装した人たちが通ってるから、間違いないと思うよ。」


 若い人だけじゃなく、年齢も種族も様々で、色んな人たちが行き来していて、例外なく何か武器を所持していた。杖も武器だろう。魔法に使えるのかそれともそれで殴るのかはわからない。機会があったら鑑定してみよう。


 「じゃあ、行くしかないかな。」


 ここまで来て何を躊躇っているのやら。


 「また緊張してる?」

 「うん、ちょっと。」

 「私がついてるから、大丈夫。」


 すると首をかしげるアヴェリー。


 「何か。」

 「ううん、なんか、まあ、うん。」


 何を勝手に納得しているのか。鑑定してやろうか。やらないが。


 「何が言いたい。」

 「何でもない。可愛いなって。」

 「可愛いのも今のうちだぞ。」

 「次に進化したら可愛くなくなるの?」

 「まだわからない。」

 「次も可愛かったらいいな。」

 「善処する。」

 「善処?どういう意味?」

 「出来たら答えるってこと。」

 「出来なかったら答えないってこと?」

 「まあ、場合によるだろうさ。それより、行かないのか。」

 「うん、行くから。ちょっと緊張解れたかも。」

 「なら良かった。」


 冒険者ギルドに堂々と入る私と少しおどおどとしているアヴェリー。中は磨かれた綺麗な石畳で、お城にも劣らないと感じた。いやまあ、この世界でお城なんて一度も行ったことないが。


 「結構綺麗な建物だよね。」


 アヴェリー感想に私も同意する。


 「まあ、儲かってるんだろう。」


 冒険者たちからちらほらと見られているが、そんなに注目されている感じはしなかった。一人だけ、入ってからすぐにじっと視線を送ってくるが、悪意はまるで感じない。むしろ心配しているようにも見える。ひげずらのムキムキのおっさんなのに。何がしたいのか。


 気になって鑑定してみると加護にアエリアナの恩恵という、今まで聞いたことのない神様の名前があって、説明にはこう書かれてあった。


 説明


 子供を守護する女神アエリアナの信徒。随分といかつい印象だが、孤児院を運営している善良な男性。本人も孤児で、孤児たちを集めては一人前の冒険者として育てるために訓練を付けたり、孤児たちが強くなる前は大道芸を身に付けさせて食うに困らない生活を提供しようと日々頑張っている。


 アエリアナの恩恵を持っている人間は子供には好かれやすい反面、子供たちの面倒を見ないといけないという気持ちが強く表れやすいため、大人には面倒くさがれることが多い。



 アヴェリーを孤児と見たか。間違ってないが、彼女は別に今更訓練する必要なんてない。ステータスを見ても、アヴェリーより敏捷低かったし。だが奴はアヴェリーを見ている。


 アヴェリーがそっちに視線を向けようとしたので、私が飛んでそれを遮った。


 「今はそっちじゃないから。」

 「うん。でも、なんで見てるんだろ?」

 「面倒な奴だから、今は関わらない方がいい。」

 「そうなのかな。」

 「間違いない。」

 「なんかいい人そうだったけど。」


 私は無言でアヴェリーの背中を押した。これでも力のステータスはそれなりに高いので、アヴェリーは私に押されて受付の方へと進んだ。


 「わかった、わかったから。」


 よろしい。


 カウンターには見目のいい若い男性や若い女性が立っていた。どこも列にはなっておらず、閑散としている。


 「アヴェリーはどっちに行きたい?女の人の方?それとも男の人の方?」

 「どっちでもいいかな。そう言うの気にしないから。でも、二クスは見る目あるよね。二クスが決めて。」


 鑑定スキルあるし、最初は肝心なんだろう。


 「そうするか。見てみるから、ちょっと待って。」


 早速鑑定の時間だ。すると色んな情報が見えて来る。全員見てみたが、一番良さそうなのはこの人かな。


 名前 セレネッラ・クオレ

 性別 女性

 種族 人

 レベル 42

 HP 368/368

 MP 319/319

 力 323

 敏捷 284

 耐久 296

 魔力 319



 スキル


 回復魔法 敵意感知 格闘術 グリタリア南部公用語(上級) エクサロニア北部共用語(基礎)


 称号


 敏腕受付嬢

 

 加護


 エギオンの恩恵


 説明

 

 茶髪で青い瞳の、人当りが良く優しいことから人気の受付嬢。10代前半のころは聖堂で神官見習いとして働いていたが、一度自分の目で外の世界が見たいがために成人してすぐ冒険者と転職。聖堂で回復魔法を習得していたため、冒険者になってからは色んなパーティから引っ張りだこだった。


 パーティで組んだことのある冒険者の男性と結婚したことをきっかけに受付嬢の仕事を始めた。受付嬢になってからはもうすぐ5年目になる。もうすぐ3歳になる子供が一人いる。




 中に汚職をしていたり、性格が悪い奴はいなかったが、人当りがよく優しいと説明で書かれたのは彼女だけだったのだ。


 私が彼女の方を指、じゃなくて、一番前にある腕で指すとアヴェリーが彼女の方へと歩いて行く。誰もいなかったので、そのまま前に立つ。カウンターの高さは、ドワーフもあるからか、そんなに高くない。


 「あの、素材を、買い取って頂きたいんですけど。」

 「はい、冒険者ギルドへようこそ。冒険者登録はしていますか?」

 「していません。登録しないと、買い取り、出来ませんか?」

 「出来ますよ。ただ、登録しないと換金しても当ギルドで寄与度を上げることは出来ません。それでもよろしいでしょうか。」

 「どうしよう。」


 アヴェリーが困った顔でこちらを見て小さくそう呟いた。


 「アヴェリーは冒険者になりたい?」


 私がそう小さく質問する。肩に乗っていて、多分受付嬢には私の声が聞こえたりはしないだろう。


 「なったらいいなって思ったけど。」

 「じゃあ、登録したらいいんじゃないかな。」

 「でも、なんか試験とかないかな。」


 それには受付嬢が答える。耳がいいんだな。エルフじゃないのに。エルフは人より耳がいいのかどうかはまだわからないが。


 「登録自体は誰にでもできますよ。ただ登録してから一年以内に討伐をしないと、冒険者ギルドからの登録は一時的に抹消され、次に登録する時は手数料をもらいます。」

 「最初の登録にはお金かからないってことですか?」


 アヴェリーがそう質問する。


 「はい、最初の登録に手数料はかかりません。」

 「何か義務は発生しないのか?」


 気になって受付嬢に聞いてみると。 


 「そちらの方は?」


 受付嬢は落ち着いてそう聞いてきた。喋るカイコを見たことがあるんだろうか。


 「私は喋るカイコ、二クスと言う。」

 「二クス様ですね。二クス様の使い魔登録もなさいますか?」


 この受付嬢、親切だぞ。


 「使い魔登録ってなんですか?」


 アヴェリーがまた質問をする。


 「はい、使い魔として登録することで、使い魔の功績は主人の物となる仕組みとなっております。」

 「逆はない?」


 今度は私からの質問。


 「主人の功績が使い魔の物になるってことですか?」

 「うん、ないのかな。」

 「それは……、ないですね。」

 「ないのか。」

 「はい、残念ながら。」


 別に残念ではないが。


 「功績欲しいの?」


 アヴェリーが私を見てそう聞く。


 「気になっただけだよ。」

 「そうだよね。でも、登録はどうする?」

 「功績ってどうやって判断されるの?」


 受付嬢に私からの質問。


 「ギルドカードに加算されるんです。使い魔が討伐で何かしらの動きをした場合、それは自動で表記される仕組みとなっております。不思議ですよね。」

 「わぁ、見てみたい。」


 アヴェリーが目をキラキラとさせると、セレネッラは優しく微笑んだ。


 「ギルドカードって何?ちょっと見せてくれる?」

 「いいですよ、これは私の物ですが。」


 私からの質問にセレネッラは躊躇いもなく自分のポケットから小さいカードを取り出した。


 それを私たちに見せてくれるセレネッラ。名詞くらいの大きさの、真ん中に青い丸が描かれているだけ。何も書いてないと思ったけど、セレネッラがその青い丸を親指で押すと空中でタブレットのような大きさのホログラムが投影された。


 そこにはこう書かれてあった。


 名前 セレネッラ・クオレ

 討伐数

 F級 1008

 E級 369

 D級 208

 C級 13

 B級 1

 A級 0

 S級 0


 総合評価 C


 犯罪記録 なし


 使い魔 なし



 興味深い技術だ。これは鑑定してみないと。




 冒険者ギルドで発行するギルドカード


 説明


 所有者が持つ固有の魔力波長から本人を認識する。


 太古の時代はエルフだけが人間種として存在していた。彼らに寿命はなく、子供は稀に生まれた。


 平和なその時代では様々技術が生まれ、彼らの文明は繁栄を極めた。数十万年も続いたその時代に終止符を打ったのは、ある神の策略だった。


 破壊と混沌こそ、魂の成長に繋がる。そう信じてやまないある神によって、世界中に魔物が生まれた。魔物は凶悪で残忍であり、繁殖力に優れていた。エルフの数が減る一方で、その事態を良しとしていなかった神によって新たな種族である人間とドワーフが創造され、エルフから子供が生まれやすくなった。


 だがそうやって生まれたエルフには、人よりは長くとも寿命が出来てしまった。


 増えた人間種は魔物との闘争で明け暮れた。その過程で冒険者ギルドが生まれ、当時にまだ残っていた様々な古代の技術が冒険者ギルドを設立するために使われた。


 だが魔物は時に村や町を丸ごと滅ぼすこともあって、古い時代を知っていた古代種のエルフはほぼ残っておらず、技術は衰退する一歩を辿った。


 それでも一部の技術は残っていて、その中でも冒険者ギルドで発行するギルドカードには様々な情報が所有者の行動の結果を元で表示されるようになっている。


 殆どロストしたテクノロジーを使用しているため、複製や偽造はちりじりになった古代種のエルフを集めないと不可能であろう。




 この世界の魔物は、悪意ではなく神の意見違いから生まれた産物ということか。破壊と混沌の末に世界を滅ぼしてやろうじゃなく、それを元に魂を成長させるなんて、理にかなっているようにすら思える。まあ、それでひどい目に会った人からしたら溜まったものじゃないと思うが。


 「犯罪記録を何をすれば記録されるの?領主が決めた法?」


 気になったことをまたセレネッラに聞いてみる。


 「この辺りの国に領主といった権限を持つ存在はおりません。」

 「領主いないの?都市国家だから?」

 「そうなりますね。」

 「じゃあ、王様は?」

 「王様が一人で法を作る権限はありません。ただ、二クス様が何を仰りたいのかはわかります。恣意的な判断によって制定された法でさえも逆らえないか、そうでないか、ですね?」

 「話が早くて助かる。」

 「それは問題ありません。このカードはとても古い、安定した時代で生まれたもので、単純に人として誰が見ても間違った行動をしている場合でなければ、犯罪としてこのカードに登録されることはありません。」

 「決闘とかはどう?決闘して、相手をうっかり殺してしまった場合は?」

 「それは問題ありません。相手の同意の元ですので。」

 「正当防衛が過剰防衛と判断されたりはしない?」

 「このカードが判断する基準は、今まで例外はなかったと思いますが、自分から悪意を以って人に直接的な危害を加えた場合に限ります。」

 「実際そうやって犯罪を犯して、このカードに表示されたらどうなるの?」

 「犯罪の度合いによって、ギルドから一定期間除名されることになります。自動で記録される総合評価も下がります。」

 「それだけ?」

 「実際に処罰をするのは冒険者が滞在中の国が決めることです。死刑になる場合もありますが、冒険者ギルドでそれらに関して一切関与は致しません。」

 「なるほど、わかった。親切な説明、ありがとう。」

 「いえいえ、これが私の仕事ですので。」

 「アヴェリーは何か、聞きたいことある?」


 黙って私たちのやり取りを聞いていたアヴェリーにそう言うとアヴェリーは首を振った。


 「今はないかな。えっと、倒したら、ここに記録される、ってことでいいんだよね。」

 「そうだよ。」

 「じゃあ、冒険者登録したい。」

 「かしこまりました。こちらにどうぞ。」


 セレネッラはそう言って、アヴェリーをカウンターの内側に案内した。私もついていく。魔力波長の登録ってのがどういうものなのか、見てみようじゃないか。

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