第4話 ウニか
鑑定スキルを使うと様々な物事を調べることが出来る。例えばこの世界の仕組みや成り立ちなども調べられる。
こんな風に。
大陸
この惑星にはグリタリア、エクサロニア、ウェノッシア、ルリアックスの四つの大陸が存在する。小エビはどこの水域でも生殖しているが、主に温暖な気候のグリタリアの南海域とウェノシアの東側に多い。
ここで私は自分がグリタリアにいることがわかった。またグリタリアに対して鑑定してみる。
グリタリア
北半球にある、東西が長く、南北が比較的に短い大陸。いくつかの半島を持っており、周辺には多くの大小異なる島がある。比較的温暖な気候で、農耕社会から発展した部族が様々な小国を形成している。森林地帯には長命種であるエルフが部族単位で生活していて、山岳地帯にはドワーフが都市国家を作って生活している。
平均的な魔物の強さは他の大陸より少し弱い方だが、個体数が多いため人口の増加は止まっている状態。
大陸が四つしかないというのは、この星が地球より小さいことなんだろうか。それを調べるために地面に向かって鑑定すると砂、岩としか出てこない。
エビは感覚が狭いのもあるだろう、後で太陽や月でも鑑定してみたら興味深い結果が得られるかも知れない。今は我慢の時。大人しく水魔法を練習しながらエビの幼生を含むプランクトンを狩って食べることに専念しよう。
ただこうするとレベルの上がる効率はとても悪い。だから時折発見する小魚も狩って食べるようにしている。味がしない状況もまた耐え難いが、進化したらどうにかなると信じたい。エビで進化したら何になるんだろう。このままより大きなエビになるのか。
寿命はまだあるが、悠長に構えているつもりはない。このまま捕食者に食われないとしても、せいぜい数年の寿命だ。要するにその前に進化しないと死んでしまう。ナクアの寵愛で寿命までは克服出来ない。少なくともそう言った説明は書かれていなかった。
次進化したら出来れば寿命が長い種族がいい気がする。すると伊勢海老か。伊勢海老は細胞が老化しないため、殻を自分で壊す事さえできれば、寿命なんてあってないようなものだ。
伊勢海老の寿命は大きくなるにつれ殻がどんどん硬くなり、その殻を脱げられなくなることで来る。そうしなくとも長ければ20年以上は生きられる。
見た目は、まあ、あれだ。受け入れるしかない。
カニになっても十年は生きるだろう。そんなに早くエビより大きな存在にならないかも知れないが。魚?エビから魚になれるものなのか。
意図的に選択肢から外しているわけではない。ただ魚の方が天敵が多い気がする。淡水ならともかく、海は魚の方へと進化したら深い水域に向かうしかなくなる。海から上がろうとしているのに逆走してどうするよ。
方針が決まったところで今日も今日とて狩りの時間だ。夜になり、私は狩人になる。いや、人というか、エビなんだが。狩エビ。なんてこった。これではエビを狩るようではないか。いやまあ、あながち間違ってはない。
今の私は、レベルがもう40台まで上がってる。相変わらず魔力以外のステータスはあまり変化がないのだが、魔力が上がったせいで貫通力もかなり上昇している。運用の範囲や行使する速度もそこそこ上がってる。
だからクラゲ相手にリベンジマッチ、まではまだ無理か。あいつら群れてるんだし。だが群れてない奴らがいる。奴らというか、奴だ。
早速鑑定。
名前 なし
性別 メス
種族 クロウニ
レベル 5
HP 34/34
MP 3/3
力 6
敏捷 6
耐久 29
魔力 3
スキル
水中呼吸 毒(弱)
説明
まだ誰も食べたことのない海の珍味。浅瀬に生殖する黒いウニ。その棘には微弱な毒があるが、ヒトデには効かないためよく食べられる。
奴は耐久値がそれなりに高い。レベルを上げるだけなら別の小魚でもいいが、魔法の威力を試すならこれくらいじゃないと。貝?あいつら飛んでるよ。パクパクと貝殻を閉じたり開けたりしながら飛んでる。まあ、海の中なんだから泳いでいるわけなんだが、あれはもう海の鳥でいいだろう。
普通にそれなりに早いスピードで移動するし、毒も持ってる可能性が高いので、狩ったところで食べることも出来ない。せっかく殺したら食べるのが筋ってもんだろう。
だから私はウニを殺して食べることにした。毒は棘の部分だけだから。
先ずは挨拶代わりにウォーターカッター。棘が結構切れてる。逃げようとしているが、残念だったな、私は残忍な捕食者なんだ。ここで仕留めて食べる。メスだし、卵でもあったらもう食べるしかない。まだ味覚はないが、気持ちの問題。
ウォーターカッターを連発。逃げるスピードなんて遅い。このエビ様の前には無意味なんだよ。エビの力を知るがいい。
我ながらしょうもない。
ただウニの討伐には成功した模様。十分ほどかかってしまった。棘はよく切れるのに、棘の下にある殻を削るまで時間がかかってしまった。
魔力が100以上あると言うのに、ここまで火力が出ないってことは人間の魔法使いだったら魔力が百万とかになったりするんだろうか。
さて、食事の時間だ。ウニをむしゃむしゃと食べる。今の私はエビなため味は全くしないが、気持ち的に気分がいい。気持ち的に気分がいいってなんだ。
ただここで私は、出会ってしまった。ウニを殺したら、そりゃ現れても仕方がない。
ウニを食べるもの、それはヒトデ。
ヒトデなんていらないんだよ。ヒトデなしな状態がいいんだよ。なんで現れるんだよ。気持ち的に気分がいい状態をもっと満喫させろよ。
だがヒトデが人、いや、高次元思考をするエビの考え何てわかるはずがない。
また鑑定してみる。
名前 なし
性別 雌雄同体
種族 赤ヒトデ
レベル 9
HP 80/80
MP 1/1
力 16
敏捷 5
耐久 49
魔力 1
スキル
水中呼吸 毒(弱)
説明
ウニの天敵。漁村では乾かしてから肥料として使われるため、人の生活領域には個体数が少ない。カニによく食べられる。
プランクトンでもないのにMPと魔力が最低値なのか。ただこいつの耐久値はウニより高い。ウニよりHPも高い。つまり、的にして使うには悪くない。動きも遅いし、殺せるかも知れない。
今度は貫通力を上げてウォーターバレットを打ち込む。少しだけ、衝撃が伝わったようで、動きがほんの少しだけ鈍る。まだウニ食べたるんだよこちとら。邪魔するんじゃない。
ウォーターバレットであまりひるまないようなので、今度は水流を操作して向かっくる方向の反対方向へと押してみる。少し減速したが、まだ向かってくる。
そりゃ食事だから簡単には諦められないのもわかるが。もう一口食べたところで、自分の中に何か言い知れない達成感を覚える。これはなんだ。ステータスを見るとそこには。
名前 なし
性別 可変
種族 小エビ(進化可能)
やった。やっと、進化できるようになった。プランクトンのエビの幼生から、多分三週間くらいかかった気がする。ここも一週間が七日なのかはまだわからないが。まあ、ほぼ20ってことで。
小エビからの進化先とかないのか。進化可能というところを鑑定…、する前にちょっと避けるか。上へと泳いでいく。ウニはまだたくさん残ってはいるのだが、今は進化の時である。ウニは後でまた探して食べればいい。
このままより大きなエビになると思いきや、想定していた範囲を軽く超えていた結果に少し唖然とする。
進化可能というところに鑑定を使用してみると、長々と無数の進化先が提示されていたのである。
これはさすがに予想外。中には昆虫もあるし。種類は多いが、全部無脊椎動物のように思われる、その中でも殻を持ってるやつばっかり。
数百どころか数千種類の生物の中で一つだけ選ぶ必要があるという事実に私は少し、外なる神のポテンシャルを甘く見ていたかもしれない。しかしまあ、これをいちいち全部見ないといけないのか。
最適解はないのか。そう思って悩むこと数分。無制限進化というところを鑑定したら何かわかるかもしれないという答えにたどり着いた。
無制限進化
同級の生物の間に制限なしに進化が可能なユニークスキル。鑑定スキルを持ってない場合は直感的に思い浮かんだ生物に進化可能。鑑定スキルを持っている場合は進化先によって得られるスキルで分類し選別することが出来る。
スキルによる進化か。海の中にいるので昆虫は先ず選べないとして、まだ海の中で使えるスキルって何があるのか。
しばらく黙考した末に私は今自分の下でせっかく私が狩ったウニを食べてるヒトデや、クラゲの群れにも通じるスキルから種族を選ぶことにした。
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