二 小夜の太刀筋

 石田が事件の経緯を話すと小夜が言う。

「今回は八重さんも佐恵さんも刀を帯びただけで、斬り合いをしなかったんだね」

「はい、刀は抜いていません」

「二人とも、どのくらいの腕前なんだろう・・・」

「気になりますか」

「うん、気になるよ・・・」


「小夜さんは刀を使った事があるのですか」

「うん、あるよ。父に教えられて立ち会いを練習した。竹藪で竹も切ったよ」

「うまく切れましたか」

「はい。初めて竹を切ったときから、苦もなく切れたよ・・・」

「それは凄いですね」


 刀の刃の向きと刀の動きがあっておらねば竹は切れぬ。まかり間違えば竹の皮で刃先を弾かれて刀が回転し、刀の柄を手から捻り取られてしまう。その程度ならまだましで、へたをすれば弾かれた刀が方向を変え、己の脚を切ってしまう。小夜にはそうした刀傷は無い。女御なりに、それなりの腕前と言う事か・・・。

 石田がそう思っていると、抱きしめている小夜から寝息が聞こえた。

「眠りましたね・・・」

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