第5話 返事がないのだけど、寝てるのかしらね

神嵐館の見取り図↓

https://kakuyomu.jp/users/kouyadoufu999/news/16817330667606089076

-------------------


 ボーっとしていると、いつの間にか三〇分ほどが経っていた。ドアが誰かにノックされた。


「溝野ちゃん、いる? 昼ごはんにしようと思うんだけど」


 恵子の声だ。


「今出ます」


 服が乱れていないかざっと確認してから出た。廊下にいるのは恵子だけだった。


「溝野ちゃんは先に食堂に行ってて。私は他の人を呼んでくるから」


 言われた通りに向かうと、途中、ロビーのソファに黒栖が座っていた。テーブルをじっと見つめている。


「遠藤さんが食堂に集合って言ってました。昼ごはんですって」


「ああ。さっき聞いた。俺も行こう」


 黒栖と食堂に入ると、そこには誰もいなかった。


 その後、恵子が呼び集め、続々と人が現れた。その結果、六人が揃った。


「井口くんは返事がないのだけど、寝てるのかしらね」


「こんな時間から寝てるとか、ちょっと変な気がするけどな」


 美里が首を傾げた。


「みんなで起こしに行かん?」


「あん? んなめんどくさいことできるか。てめぇらで勝手に行けよ」


 真渕がふんぞり返って足を組んだ。真渕以外は美里に同意したので、五人で二一〇号室へと足を運んだ。


「おーい、井口くん、昼ご飯食べないのー?」


 恵子が声を張り上げるが、相変わらず返事はない。私たちは互いに顔を見合わせた。町谷が決心したように言った。


「フロントにマスターキーがありましたよね。開けちゃいましょうよ」


 驚いた。みんなも同じようなリアクションだった。周囲の反応を見て、不思議そうな顔で町谷が続けた。


「別にいいでしょう。だんまりを決め込んでいるか、惰眠をむさぼっているかです。こじ開けるくらい許されますよ。取ってきますね」


 勝手に決めて、行ってしまった。


「いいんでしょうか」


 私が誰にともなく言うと、恵子が少し考えてから言った。


「まあいいんじゃない? まさか着替え中とは思えないし。かなりの回数呼んだんだけど、うんともすんとも言わないもの。やっぱり何かおかしいわ」


 まもなく、町谷が帰ってきた。カードキーを押しあてると、ピッと機械音がして解錠された。


「開けますよ」


 返事も待たずに町谷が扉を開け放った。


 そこには、井口が床に仰向けに倒れていた。その顔は鬱血し、生気がなかった。


「キャーーー」


 が……。


 薄らぐ意識の中、叫んでいるのは自分らしいとおぼろげながら認識した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る