第2章 神と人―神殺し

犯した罪

 ―5年前

 

 「く!来るなあ!お前一体何をやっているのかわかっているのか!」


 目の前の老いぼれがなんかギャーギャーと吠えている。

 大事な幼馴染を轢き殺しておいて何をそんなに吠えてんだか、ほんっと金以外価値のない糞ジジイだな。


 「そうか!金か!金ならいくらでもやる!だから!な!命だけは!な!」


 このジジイ…金さえあればなんでも許されると勘違いしてんのかこの野郎、だから嫌いなんだよ、金と権力を私利私欲に使う奴が。


 「うるせえじじい」


 とりあえずそいつの左腕を包丁で斬り落とした。


 「ギャアアアア!!!いだい!いだい!」


 「ああうるせえうるせえうるせえうるせえうるせえ!!!うるせえ老害糞ジジイ!!!」


 あああああああああああああああ!!!!イライラが止まんねえ……頭がおかしくなりそうだ……なんで…なんで…菜月が死ななくちゃならなかったんだ、なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜだ?


 「何がしたいんだこのガキ!金じゃねえなら要求はなんだ!?」


 なんだこのジジイ…普通に会話できるじゃねえか、認知症だかで捕まらなかったくせによおお!!!


 あまりに腸が煮えくり返りジジイの顔面を思いっ切り蹴り上げる。

 俺に蹴られたジジイは床に横たわり「ヒイィッ」と怯える。


 何がヒイィッだ!てめえは認知症を理由に捕まらない上に菜月の両親にも圧力を掛けて結果的に示談で済ませてお咎めなしにしたじゃねえか!糞が!!俺がお前に復讐するために7年費やしたんだ!


 「た…助け……」


 助けてだあ?ふざけんなジジイ!お前の下手くそな運転で轢かれた菜月の方がもっと苦しかった!俺に蹴られ切断されるだけでもマシな方なんだよ!


 ジジイは床を這って俺から必死に逃げようとする。


 「おい!逃げんなジジイ!まだ終わってねえぞ!」


 俺はジジイの髪を掴み引っ張り、窓などの脱走できる出口から無理やり離す。


 「ゆ…許してくれぇ……」


 「ちげえよ!そこは許してください!だろ!」


 死なない程度にジジイの顔面と体を蹴ったり殴ったりを繰り返す、もちろんジジイが丁寧な言葉で「許してください」と言っても俺はそのまま暴行を加え続けた。


 「ヒューッ……ヒューッー……ヒューッー……」


 そろそろ限界そうだな、今すぐにぶっ殺したいところだが、俺にはこいつにやるべきことがあった。


 「おいジジイ、7年前お前が轢き逃げした事件あるだろ?でも認知症を理由に心神喪失?だっけなあ?それで結局警察には捕まらず、こうして豪邸でのうのうと暮らしてるってわけだ」


 俺は続けてジジイに詰め寄る。


 「おい、お前に二つ聞きたいことがある、お前は当時本当に認知症だったのか?あと被害者の両親に何を吹きかけた?この二つの質問に正直に答えれたら命だけは助けてやる」


 もちろんそれは嘘だ、誰がこんな奴を生かすものか。


 「そんな…7年も前なんて……覚えてな――」


 バキッ!


 ジジイの右足の骨を折ってやった。


 「ギギャアアアアアア!!!」


 折られたジジイは汚ねえ悲鳴をあげてもがき苦しむ。


 「さあ、どうする?お前が生き残る最後のチャンスだ」


 さすがに序盤はそう簡単には吐かないだろう、と思った。

 だがしかし、それは杞憂だった。


 「わかった!言う!言うから!言うから命だけは……」


 ジジイの掌返しに呆れたが、俺はジジイの口から事件の真相、菜月の両親への脅し、そして認知症の診断書改ざん等に加担した関係者らのことも全て吐かせ、同時にこっそり録音機で会話の内容を録音した。


 「そうか、認知症を偽っただけじゃなく、菜月の両親にも脅しを掛けたというわけだな」


 「そうだ!認知症なんて嘘!刑事でも民事でも訴訟を起こされたら色々と面倒だからな、だから示談だけで済むために色々と根回ししたんだよ!」


 ジジイの声そのものに嫌悪感を抱きつつも殺意を抑えてジジイの自白を録音することができた。


 「言ったぞ、言ったのだから早くこのわしを解放しろ!そういう約束だろ?」


 ジジイのその言葉に俺の中で何かが切れた。


 ザシュッ!


 「ギャアアアアアアアアアアアアアッ!!」


 気づけば俺はジジイの腹に包丁を突き刺していた。

 腹を刺されたジジイは腹を右手で押さえながら悶絶している。


 「オイ……話が違うじゃないか……」


 「話が違う?……おいおいまさかこの状況で本当に助けてもらえるとでも?ハハハッ…ふざけるな!!」


 俺はジジイの出血部分目掛けて蹴り上げた。

 蹴られたところからまたさらに血が噴き出ている。


 「く…クソガキがあぁ……」


 「てめえに糞とかガキとか言う資格ねえんだよ、老害風情が」


 俺はジジイの顔を踏みつけ、ぐりぐりと踏む足に力を籠める。


 「お前が吐いた内容は全部録音した、でも、これを警察に届けても揉み消されるだけだ」


 「そうだ…ガキのくせによくわかってるじゃねえか……そんなもの証拠にもならん」


 ジジイの薄ら笑いに腹が立ったのでもう一回出血部分に思いっ切り蹴る。

 蹴られたジジイはまたも悶絶して呼吸が荒くなる。


 「そうだ、お前の言う通り証拠にならない、だから……」


 俺は顔を近づけジジイに言った。


 「ネットにお前の悪事と録音をばら撒く、あとついでにあまり期待はしないが週刊誌の記者にも自宅にあった悪事の証拠と録音データを送る」


 そう言うとジジイは恨みの目で俺を見る。

 ジジイの悔しそうな顔に俺はつい笑みがこぼれそうになる。


 「あそうだ、殺すのはお前だけじゃない、認知症捏造と圧力に加担した奴も続けて殺す、一人も逃さずな」


 「くうぅ……」


 俺はもう一本ジジイの家にある包丁を拝借し、ジジイの右腕はもちろん、両足も包丁で切断した。


 「ギャアああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア痛いいいいいいいイイイイイイイイッ!!!!!!」


 四肢を切断した後、次にジジイの股間から腸のある位置まで包丁で丁寧にスライスしていった。

 肉を削ぐ度に出血がさらに増していった。

 削げば削ぐほど出血と同時に悲鳴も大きくなる。


 「いだだだダダダダダダダダダッ!!!やめろおオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!」


 削ぎ始めてから何時間経っただろうか、気づいたら窓から朝日が差し掛かっていた。

 全身がジジイの血で染まり、当のジジイは息一つもせずピクリとも動かず肉の屍と化した。


 「死んだか…」


 ジジイの死に俺は今までに感じたことのない達成感に満ち溢れていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る