告白の行方
「でも! だって私のことが嫌いだったんじゃないの?」
信じられないという表情のまま、彼女は問いただしてくる。
「そんな事無い! 僕もこんな気持ちになったのは初めてで、どうしたらよいのか判らなくて、凄く苦しくて…。」
どうやら私がからかっているわけではなく、本気で訴えているということが彼女には十分に伝わったようだ。
「いつから…私のことが好きだったの? ずっと前から?」
「判らない…。でも好きだと気が付いたのはつい最近で、それからは好きになりすぎちゃって…。こんなに苦しくなるなんて…。それで高梨さんにたくさんちょっかいを出してた自分がバカだったなぁって落ち込んで…。」
「………。」
「高梨さんが他の男子と話しをしてたり、笑ってたりするのを見ると、胸が苦しくなって…。」
「………。」
「どうしてこんなに苦しいのか全然判らなくて…。その気持ちが何なのかを考えてる内に、高梨さんの事が好きなのかも知れないと気が付いたら…。」
「………。」
「もう気持ちが…。抑えられなくなっちゃって…。高梨さん、僕、君の事が大好きみたいです!」
「あっ…。ありがとう…。ちょっとびっくりしちゃって…。ずっと嫌われてるのかと思ってたから…。」
「ずっと高梨さんが嫌がるような事をしてしまってゴメンナサイ…。」
「そ、それは…。もう良いけど、ごめんね。実は私、好きな人がいるから、あなたの気持ちには応えられないの。」
「えっ!? そ、そうなの? それって今までずっとちょっかいを出してたから、僕の事が嫌いってこと?」
「違うの。実は…。私はずっと前から大塚くんの事が…好きだったの。」
「そ、そうだったんだ…。大(おお)ちゃんの事が…。」
「うん、ごめんね。だけど、あなたの事も友達としては好きだよ? 6年間ずっと同じクラスだった子って男女合わせても他には居ないし、不思議な縁だよね。」
「うん…。僕は高梨さんの事が凄く好きだけど、高梨さんが大ちゃんの事を好きなら諦めるよ。なんか格好悪い所を見せちゃってごめん。だけど、僕の事を嫌いにならないでね!」
「それは勿論だよ! これからも仲良くしてね!」
思い切り振られてしまったのだけど、自分の苦しい胸の内を本人に打ち明けることが出来たことと、彼女が好きな相手を正直に打ち明けてくれた事で、不思議とスンナリ諦める事が出来たのでした。
「別に喧嘩をしてたわけではないけど…。これからは仲良しだね!」
高梨さんはそう言って、ふと近寄るともう一度私のことを抱き締めた。
その時、初めて気が付いたのだけど、とても優しく、良い香りが私の鼻をくすぐった。
そしてその香りを求めて、その後40年も探し続けることになるとは、その時は知る由もなかった。
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